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INTERVIEW

自社一貫体制による豊富なアイデアとスピードで躍進。

2021.02.22

ーー 昨年は新型コロナウイルスの流行で花火大会や祭りなどのイベントが中止となり、浴衣の需要も低下してしまいましたが、御社は「洗える絹マスク」を商品化し、大きく売り上げを伸ばしました。その経緯をお聞かせください。

小杉 弊社は浴衣帯の全国シェアが9割の帯屋ですから、感染拡大に伴い新規の帯の受注は激減してしまいました。昨年3月には生産を半減し、100人の社員も半分休ませ、国の雇用調整助成金でしのぐことにしたのです。国内のマスク不足が伝えられる中、弊社でのマスク生産の可能性を模索しながらも、実は作りたくないという気持ちも当初はありました。使い捨てのイメージがあるマスクを作るということは、高級な帯に携わってきた我々メーカーの誇りを捨てるようなものですからね。

47都道府県の祭りの写真を一つずつプリントしたマスクを製作。
コロナ禍で夏祭りや花火大会が中止された状況を憂い、次回の再開を願う思いが込められている。

ーー では、「洗える絹マスク」への転換のきっかけは何だったのでしょうか。

小杉 それが4月初めの社内ミーティングで「マスクの幅と帯の幅は同じじゃないか」と驚きの偶然に気づいたんです。そこから一気に心がマスクの方向に傾きました。稼働を半減していた工場を見回せば、二重織りで抗菌性の高い絹の生地はフィルターに、帯を曲げるための形状記憶素材はワイヤーになる。耳ゴムは子ども用へこ帯に使う横糸を転用し、工場の機械で作ればいい。当時1台だけあったミシンで外国人技能研修生が立体縫製し、6時間ほどで完成した見本のマスクを京都の和装問屋に持って行きました。問屋には最初断られてしまったのですが、帰路の道中で問屋から電話が入り、スマホで撮った写真を和装小売店に見せたところ売れたと言うのです。その注文数は6千枚から瞬く間に増え、週明けには1万5千枚になっていました。それからは社員全員に出社してもらって増産体制を整え、小杉織物の「洗える絹マスク」は多くの方に喜んでいただける商品になりました。

ーー 気温の高い夏にはマスクの売り上げも低迷したと聞きます。そんな時に中日新聞の記事をきっかけに、藤井聡太さんが棋聖戦で御社のマスクを着けて勝利し、快挙と同時にこのマスクの話題が全国を駆け巡りました。反響はすごかったそうですね。

小杉 7月半ばのこの頃は大手メーカーが次々と安価なマスクを販売し、弊社の生産はガタ落ちになっていた時期だけに、「こんなにすごい人が大事な勝負の世界でうちのマスクを着けてくれた!」と私も本当に嬉しく、話題になると同時に大量の注文が入ってきました。藤井二冠がもたらしてくれたこの効果は、まさに“ご褒美”だったように感じています。

ーー 9月に初めてご出稿されていかがでしたか。

小杉 多数のメディアに取り上げられたもののそう長くは続きませんでした。自力で受注を生み出さなくてはいけないと思っていたところに出会ったのが、新聞広告でした。その反響たるやもうすごかったです。電話は1日200件ほどが10日は続きました。それまで3回線だった電話回線を8回線に増やしたのです。でも当初は「広告にかける分、返ってくるのかな」と、半信半疑でした。お客様の中には新聞広告を切り抜いて30回かけてようやくつながった方や、8割近くのお客様がリピートでご注文を頂いているなどびっくりしました。申し込みは電話とネットが半々でしたが、ネットをやらないお客様からも電話ですと質問にも丁寧に答えられるなど多くのメリットや気付きがありました。また、広告掲載の場所がテレビ面という目立つスペースだったうえに、中部圏という地域性、じっくり考えながら読む新聞の読者層、それに高級感のあるシルク製マスクを使う年代層、新聞読者には富裕層が多いなどの好条件がマッチしたのだと思います。

中日新聞 2020年9月25日 朝刊他計4回掲載 テレビ面左特枠広告

ーー 自社一貫体制は御社の強みでもありますね。絹マスクの特長や現在マスクの種類はどれほど開発されたのでしょうか。

小杉 保湿性がよいため肌に優しく抗菌、消臭効果にも優れた絹の特性を生かし、これまでに作った種類は850種類ほど。弊社はずっと企画からデザイン、製造、販売と自社一貫体制、外注に頼らない帯屋でここまで来ましたから、帯で培った技術に加え、全部自分たちでやるという社員の意識が根付いています。これまで日本一の帯屋になるためにはアイデアとコスト、スピードが欠かせないと思ってやってきましたが、マスクビジネスでは特にスピードが会社を支えています。早朝にアイデアが浮かび、夜の6時には見本ができていることもあるのですよ。何百年という歴史がある帯と違い、マスクはその場その場で対応して商品を考えていかないと、大きなメーカーなどには敵いませんから。

一つ一つ手作りでマスクを縫製する女性社員。小杉織物縫製工場にて。

ーー 1月16日に行われた名古屋城こども王位戦にも協賛していただきました。

小杉 参加する500人のお子様に藤井聡太さんの着用した子供用マスクを提供し、3月の広告掲載の準備も進めています。ゲスト出演の藤井二冠は愛知県瀬戸市出身ですし、中部圏でのなじみは深く、中日新聞の読者の方々の関心も高い。お陰様で中部圏で弊社のマスクのイメージも定着しました。この事業での載録紙面に広告を出す意義はとても大きく、藤井二冠にはもちろん、弊社のマスクを早い段階で使ってくださったご家族にもお礼を言いたいですね。

ーー 最後に、新聞広告や新聞社へのご意見やご要望がありましたらお話しください。

小杉 マスク生産の開始から、新聞記事に取り上げられたこと、藤井二冠の話題、そして新聞広告での再びのヒットと、弊社のホップ、ステップ、ジャンプでした。新聞広告や記事がなかったら今の弊社はありませんでした。お客様からの電話でも新聞に対する安心感や信用性、信頼度がいかに高いかということを改めて実感しましたね。今まで弊社の名前や商品を知らなかった人たちの多くが新聞広告や記事を見て商品を買ってくださいました。商売をしている人には地方でも、小さな会社でもやれるんだという励みにつながればうれしいですね。私も商品を売るために新聞広告を出すということを自分でやってみて、それが大きな自信につながりました。実は現在、ウェブ広告の取り組みも進めているのですが、新聞ほどの効果は出ないだろうなと感じています。マスクの時代がいつまで続くのか先を見通すのは難しく、これからも限界を感じることが多いと思いますが、限界を感じた時にまた新たなパワーをもらえる。新聞はそんな存在であってほしいですね。

ーー 貴重なお話をありがとうございました。我々も、新聞を通して新たなパワーを発信してまいりたいと思います。

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