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東海エリア2024年プロジェクト動向~リニア新時代に向け、さらに動き始める名古屋~

2024.01.29

愛知発のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」への期待

 2024年のプロジェクトで注目されるのが名古屋市に開業する「STATION Ai(ステーションエーアイ)」である。愛知県は2018年に策定した「Aichi-Startup戦略」に基づき、様々なスタートアップ支援を進めてきたが、同戦略の中核事業として名古屋市鶴舞公園南側に日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」を今年10月に開業する。新たな市場開拓を目指すスタートアップの創出・育成のほか、国内外のスタートアップ支援機関・大学との連携等を通じて、様々な支援サービスが提供される。ものづくりの地・愛知県ならではの既存産業と新たな産業との融合によるイノベーションが生まれることが期待される。STATION Aiの開業は、今後の愛知県及び東海エリアの産業活性化に寄与するものとして注目される。

STATION Ai 完成予想図(名古屋市)

さらに進む名古屋の都市開発

 リニア中央新幹線の開通予定が2027年以降と発表され、明確なゴールであった2027年という明確なタイムスケジュールは先送りされた。しかし、リニア中央新幹線開通後の需要やニーズ、社会の流れの変化を見通した都市開発プロジェクトは活発に動いている。特に、名古屋駅周辺及び栄地区の都市開発は依然動きがあり、名古屋の2大繁華街は、リニア新時代に向けたこれから数年間でさらに様変わりしようとしている。

 特に今年の目玉となるのが今年4月23日に全面開業する「中日ビル」である。地上33階、地下5階建ての超高層ビルは栄の風景を一変するほどのインパクトをもって登場した。オフィス(9~22階)、ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋(24~32階:2月20日開業)、中日ホール&カンファレンス(6階・3月29日開業)、ショップ&レストラン(B1 ~5階、7階)の複合機能は栄だけではなく名古屋のビジネス・にぎわいの交流拠点として期待される。

 その他にも、名古屋市内では、名駅地区に「(仮称)三交名古屋駅前ビル」(12階建、春開業)、丸の内地区では「名古屋シミズ富国生命ビル」(16階建、3月竣工)と今年前半に大規模なオフィスビルの竣工が続く。コロナ禍においては既存ビルに注目が集まったが、収束後のオフィス需要の回復により、これらの新築オフィスビルが活況を示す可能性が高い。

 その他の地域で注目されるのが、静岡県裾野市でトヨタ自動車が開発を進めるウーブン・シティ。2024年夏に第1期完成の予定で、全世界から注目される次世代技術の実証都市の第一歩が始まる。

4月23日に全面開業する「中日ビル」(名古屋市)

ホテル、商業施設開発の動き

 ビジネスが活況づき、観光交流もコロナ前以上の状況になるとホテル需要にも期待される。ホテルで注目されるのは前述の中日ビルに開業する「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋」である。宿泊主体型のホテルで客室数は246室(メインの客室は栄地区最大級)。宿泊客以外でも利用できる高層レストラン(24階、約120m)も開設される。また、建て直しを進める名古屋の名門ホテル「ホテルナゴヤキャッスル」は2024年度中をめどに再開業を予定している。

 商業施設は新旧の業態の入れ替えが各地で始まっている。特に、これまで地域の商業をけん引してきた地方百貨店が閉店することになり、時代の変換点であることを認識させられる。岐阜県岐阜市の中心部にある岐阜高島屋は、今年7月に閉店する。国内有数の規模を誇る柳ケ瀬商店街に隣接する百貨店の閉店は、商店街の生き残りとともにまちなか商業の難しさを物語る。これで岐阜県内の百貨店は無くなり、中部地方の県で百貨店のない県は初となった。また、愛知県一宮市の名鉄百貨店一宮店も今年の1月に閉店する。

 また、名古屋の繁華街・栄のロフト名古屋も昨年6月に閉店し、跡地にはスポーツ用品大手のアルペンの旗艦店が入居する予定となっている。 

 新しい動きとしては名古屋鉄道の開発に注目だ。愛知県岡崎市の名鉄・東岡崎駅には、名鉄が進める駅直結型複合ビル「ミュープラット東岡崎」(三河地区初)が春に開業を予定するほか、名古屋の代表的な観光名所である熱田神宮の最寄駅となる神宮前駅西街区に、飲食店を中心とする新たな商業施設を秋に開業する予定だ。熱田神宮詣での参拝客や観光客の周遊を促し、観光地エリアとしての魅力向上に期待される。

新エリア開園で「ジブリパーク」の魅力がさらに充実

 2022年11月1日にオープンしたジブリパークには、国内外から多くの来園者があり、愛知県及び東海エリアの名所として人気を呼んでいる。「ジブリパークのある愛知」として、国内外に愛知県の存在を広く知らしめるとともに、訪れたくなる愛知県のイメージを高めることに繋がっている。昨年11月に第2期整備エリアの「もののけの里」が開園。今年の3月には「魔女の谷」が開園を予定し、5エリア全てがそろう。「魔女の谷」(約2.9ha)は、映画『ハウルの動く城』や『魔女の宅急便』などに描かれる空間をイメージしたエリア。『ハウルの動く城』の主人公ソフィーが切り盛りする店「ハッタ―帽子店」や、その建物内には、ソフィーの作業場も表現される。「ハウルの城」もできる。

その他の地域では、愛知県豊田市に豊田市博物館が4月に開館、岐阜県本巣市の東海環状自動車道・本巣PA隣接地に昨年7月に開業した「もとまるパーク」には飲食・商業ゾーンが新たに整備される。岐阜県大垣市では、奥の細道むすびの地記念館のそばに商業施設「船町ベース」が3月に開業。静岡県藤枝市では丸七製茶が、静岡県の地域文化である東海道とお茶をテーマにした複合観光拠点を今夏に開業する予定だ。東海道とお茶という外国人にも関心が高いテーマ設定から外国人観光客の訪問にも期待される。

3月に開園するジブリパークの新エリア「魔女の谷」の建物イメージ(愛知県長久手市)Ⓒ Studio Ghibli 

各地で大規模イベント開催

 愛知県内では自動車レース関連イベントが盛んである。2022年に12年ぶりに日本で開催され話題を呼んだFIA世界ラリー選手権「ラリージャパン」が、昨年も豊田市、設楽町、恵那市などで11月に開催され、約54万人のモーターファンを集めた。2024年も11月に開催することが決定しており、地域活性化にも期待される。また、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで毎年秋に開催されてきたF1日本グランプリは今年は4月開催となる。

 また、公道を使った国内最高峰の自動車レース「全日本ラリー選手権」が3月に愛知県蒲郡市で「ラリー三河湾」として開催される。

 静岡県のイベントでは、2004年の浜名湖花博開催から20周年を記念して、2024年春から初夏にかけて、浜名湖花博が開催される。「どうする家康」効果で多くの観光客が訪れた浜松エリアにおいては、今年は花博で全国各地、また海外からの観光客の来訪にも期待する。

 岐阜県では、『清流の国ぎふ』文化祭2024(第39回国民文化祭、第24回全国障害者芸術・文化祭)が10月~11月に開催される。また、三重県伊勢市では、パリ・パラリンピックの国内最終選考会を兼ねる日本パラ陸上競技選手権大会が6月に開催される。

道路整備の状況

 東海エリアの道路ネットワークは、年々拡充をみせている。2024年度には、愛知県名古屋市と豊橋市を結ぶ国道23号名豊バイパスのうち未開通区間の蒲郡バイパスが開通し、全通の見通しとなっており、愛知県内の東西の交流、物流の活性化に期待される。また、主な高速道路では、2026年度中に全線開通が予定される「東海環状自動車道」の整備により、強固な高速道路ネットワークが構築される。現在工事中の岐阜県内の山県IC~大野神戸IC間が2024年度中の開通を予定しており、残りの養老IC~北勢IC区間(18km)が2026年度に開通すると全線開通となる。

たなか みつふみ

田中 三文

旅人総研 代表/

愛知大学 地域政策学部

非常勤講師

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