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INTERVIEW

企業の価値観や信念を反映した広告が共感を生む

2022.10.27

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ーー 2021年11月にご出稿いただいた貴社の広告「人生には、飲食店がいる。」が、第13回中日新聞社広告大賞一般紙の部で最優秀賞を受賞されました。おめでとうございます。まずはこの広告に込めた思いをお聞かせください。

水口 新型コロナウイルス感染症の影響で、この2年半の間に休業要請や営業時間の短縮要請、酒類の提供禁止など、飲食店は大きな打撃を受けています。当社は、商品として酒類を販売していますが、同時に飲食文化を提案し、人と人とのつながりをつくってきた経緯があります。そして、そのパートナーこそ飲食店に他なりません。ともすれば「もう家飲みでいい」という空気感が広がり、飲食店が苦境に立たされている現在、ともに飲食文化を築いてきたパートナーとして飲食店を応援したいという思いを込めて、この広告を制作しました。

中日新聞 2021年11月3日朝刊
シンプルな言葉とイラストによる飲食店への応援メッセージを綴った広告。
灯り、友だち、生きる喜びといった言葉で、人生における飲食店の大切さを表現。

ーー 飲食文化を築いてきたというのは、まさに120年以上もの歴史を紡いできた貴社ならではの思いですね。

水口 当社は1899年の創業以降、国内でいち早くワインやウイスキーの開発を行い、洋酒文化を黎明期から牽引してきた自負があります。ワインもウイスキーも、当時は多くの消費者にとって馴染みのない嗜好品だったので、おいしい飲み方や楽しみ方、合う料理など、文化として紹介する必要がありました。当社が提供する商品と飲食文化が定着してきたのも、消費者が楽しむ場として飲食店があったから。だからこそ応援したいという気持ちが強いんです。

ーー この広告が掲載されたのは2021年11月。ちょうど新型コロナウイルス感染症の第5波が落ち着きつつある頃とはいえ、飲食店を利用するにはまだまだ抵抗があった時期です。社内的に反対意見は出ませんでしたか。

水口 さまざまな意見があったのは事実です。ちょっとしたことで炎上してしまう時代なので、企業が何らかの意見を表明するのが難しい面はありますし、特に今回のように反発が予想されるケースはなおさらです。当社のメッセージは、飲食店に行こうと呼びかけるものではなく、キャッチコピーに「人生には、飲食店がいる。」とあるように、あくまでもそれぞれの人生における飲食店の大切さを訴えたものですが、誤解されてしまう懸念は十分にありました。ただ、そんな中でも私たちが最も重視したのは、直接飲食店とやり取りしている営業現場からの意見です。この広告が特殊だったのは、販売戦略マターではなく、飲食店の皆さんのご苦労に日々触れている営業担当と一緒に制作を進めた点です。すぐにでもやるべきだという思いがあったので、制作期間も通常の半分以下、1カ月半ほどでの出稿でした。毎日のように確認事項があって大変でした(笑)。

ーー そうしたご苦労の中でご出稿いただいた広告ですが、飲食店や消費者の反応はいかがでしたか。

水口 私たちが懸念したようなネガティブな反応はほとんど見られず、飲食店からも消費者からも「勇気をもらった」「心に響いた」といった声をいただきました。中には長文のお手紙をくださったケースもあります。また、テレビCMや新聞広告に合わせて、ポスターやステッカーも作成しましたが、当社と取引のない店舗からもお店に掲示して協力したいという申し出がありました。最近の企業活動は、CSRやパーパスといったことが重視されますが、企業が自社の価値観や信念に基づいてメッセージを発信すれば、多くの方にきちんと届くのだなと改めて実感することができました。

サントリーでは広告展開に合わせ、飲食店を利用する人々の声や気持ちをキャッチコピー化したポスターを制作。公式サイトからのダウンロードも可能だ。

ーー 消費者からも好評だったとのお話がありましたが、中日新聞社広告大賞は、専門家による最終審査の前に、公募で選ばれた読者が一次審査を行います。読者の共感を得たからこその受賞だったと言えますが、この点についてはいかがでしょう。

水口 飲食文化は消費者の生活に根差しているものなので、一般の読者の方に共感いただけたのはとても意義深いと感じています。この広告には、便利な機能もお得な情報も載っていませんが、それでもこのような評価がいただけたことは本当に嬉しいですね。この広告が少しでも飲食店の支援につながったのなら出稿した甲斐がありますし、こうしたことをきっかけに消費者の方にファンになっていただければ、結果として当社の事業の成長にもつながると思います。

ーー 中日新聞でも、飲食店応援キャンペーンを記事にしたり、東京本社ロビーでテイクアウト商品を販売したりといった取り組みをしているので、今回の貴社の広告には大いに共感するところです。最後に、新聞広告に対する期待や要望がありましたらお聞かせください。

水口 新聞は公共性や中立性が高いとされているメディアなので、企業のステートメントを出すのに適していると感じます。現代の消費者の皆さんはいろんな情報をお持ちで、価格が安いといった表層的な面だけではなく、もっと深いところで共感していただく必要がある時代です。今回のようなメッセージを発信する際には、ぜひまた積極的に新聞広告を活用させていただければと思います。

ーー 心に響くメッセージを楽しみにしています。本日はありがとうございました。

広告のデザインテイストを生かした飲食店用のマナーポスターは、従来の飲酒マナーに感染対策も盛り込んだニューノーマル仕様。

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