MARKETING MAGAZINE
マーケティングマガジン
ナゴヤ愛
2022.08.19
第9回
バスケと豊川に愛を込めて
ZIP-FMの人気DJ“コバタク”こと小林拓一郎さんが2020年8月に地元・豊川市にOpenしたグレープパークコート(以下グレパー)。併設されたカフェの開店時のみ、誰でも自由にバスケットボール(バスケ)を楽しめるよう、無料開放されています。
名前の由来は、小林さんの実家の葡萄畑だった場所だから。コートを作った理由は、バスケと豊川に恩返しがしたかったからだと言います。「今の僕があるのは、全部バスケのおかげなんです」と話す小林さん。
小学時代は勉強も運動も苦手な、本人曰く「ダメな子」でしたが、バスケを始めたことでミラクルが起こります。中1の時には、バスケのゴールを庭に作ってもらうことを両親に交渉し、学年50位の成績を目指し猛勉強。結果は60位でしたが、自信がついた小林さんは、それを機に成績がぐんぐん上がり、高校は進学校に入学します。
大学時代はバスケ選手を目指し、米国オレゴン州コーバリスに留学。大学にラジオ局があると聞き、学生DJに応募したことが次の転機に。それまでバスケにしか興味がなく、ラジオを聴いたこともなかった小林さんでしたが、DJは天職となったのです。選手になる夢は叶いませんでしたが、バスケがなかったら、留学することもDJになることもなく、確かに今の小林さんはいなかったでしょう。
大好きなバスケと自分を育んでくれた豊川のまちに恩返しをしたい、次第にそんな想いが募るようになっていきます。米国では普通に街中で見かけるバスケゴール。日本では、まず見かけません。子どもたちにもっとバスケを好きになって欲しい、バスケのすそ野を広げたい、それが小林さんの次の目標となりました。
紆余曲折あって、後継者のいない葡萄畑にバスケコートを作ることを決めます。潤沢な資金があるわけではないため、葡萄棚の200本もの柱を自分たちで抜く経過をSNSに上げていると、手伝ってくれる人が30人以上に膨れ上がりました。「豊川のためならぜひ応援したい」と、地元の造園業や舗装工事などの会社も協力を申し出て、現在もスポンサーとしてサポートし続けてくれています。念願のバスケコートが完成。自分ひとりでは決して叶うことのなかった夢。みんなで叶えたからこそ価値がある、と小林さん。
グレパーではプロの選手を招くこともありますが、あえてバスケとは関係ないイベントを行っています。バスケに興味ない人に興味を持つきっかけになって欲しいから。もちろん、子どもたちがカッコイイ選手に憧れて、バスケ選手を目指すようになって欲しいとも願います。小林さんの次の夢は、グレパーから出たバスケ選手のアナウンスをすることなのだそう。
取材当日は小林さんの親友・MASHさんのライブを開催。会場の人たちの一体感で、熱い夜となりました。MASHさんのやさしい歌声が心にしみて、筆者も思わず涙。
グレパーはこの先、伸びゆく葡萄の蔓のように、ますます愛される場所になるでしょう。ひとりでは難しくても、みんなで叶えられる夢が見られる場所だから。
(写真撮影:宮田雄平)