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ナゴヤ愛

第13回 「ナゴヤ愛」は「鯱」の形

2023.04.30

 2022年5月、Twitterのトレンドに入った「和菓子離れ」という言葉。同時に注目を集めたのが、明治40年創業の老舗「元祖鯱もなか本店」の投稿でした。「看板商品の鯱もなかは大正10年生まれ。名古屋の象徴・金鯱の形のもなかは、名古屋銘菓として長く愛されてきました。しかし、2020年、鯱もなかは99歳でこの世から消えようとしていたのです」老舗の告白に、日本中から応援の声が届きました。

▲『元祖鯱もなか本店』古田花恵さんと夫の憲司さん

 材料にこだわった職人手作りの菓子を、大量生産の菓子と同じ価格で提供してきた同店。「大変そうな両親の姿を見て育った」という4代目社長の古田花恵さん。コロナ禍もあり、先代限りで店じまいすることが決定。そこに疑問を投げかけたのが、花恵さんの夫の憲司さんでした。「100年も続くお店がなくなるのは、もったいないのでは?」そんな折、お店の経営が苦しいことを知ったお客さんからも「老舗の味を守って欲しい」という声が。

 そうした声に背中を押されて、花恵さんは4代目になることを決意。SNSを開始し、ECサイトを整え、プレスリリースを作って流しました。2021年秋からは、憲司さんも不動産の自営業の傍らTwitterを担当するように。

▲もなかには、ひとつずつ丁寧に餡子を詰める

 店内にイートインスペースを作ろうと、2022年1月に挑戦したクラウドファンディングでは、目標額の300万円にはなかなか届かず・・・そんな中、誰かがつぶやいた「SHACHIの出番だとおもうんだ」というTwitter上の言葉が、ミラクルを起こします。SHACHIとは、名古屋のご当地アイドル・TEAM SHACHI(チームシャチ)のこと。そのつぶやきは、TEAM SHACHIのファンを動かし、目標額を上回る360万円を達成。TEAM SHACHIとのコラボ商品まで生まれました。

 冒頭の2022年5月には、Twitterのフォロワーは1万6千人を超え、毎日「鯱もなか」の投稿を見かけるようになっていました。

 それでもまだ経営は楽ではありませんでした。バズった他老舗店の菓子を食べては投稿したり、リツィートの数だけ縄跳びに挑戦したりと、話題にしてもらうために、あらゆることをしたといいます。

▲3代目の父・寛さんがはじめた洋菓子も絶品。

 そんな中「和菓子離れ」の中でも、今後も頑張る『決意表明』をしたことが、大きな「バズ」になりました。さらに、7月に将棋の藤井聡太五冠のおやつに選ばれたことも追い風に。

  現在、Twitterのフォロワーは4万人近くになりました。かわいい鯱アイコンの「おは鯱です!」に毎朝ほっこりします。

 花恵さんは、家業の傍ら製菓の学校に入学。強敵ぞろいの中、校内のコンテストでなんと優勝!優勝したケーキは、金鯱の見事なデコレーション(右イラスト)。やはり鯱愛、最強です。

▲祝・優勝!名古屋のお座敷名物「金のしゃちほこ」で、ひよこたちもお祝い

 この鯱もなか、「幸せを運ぶ鯱もなか」とも呼ばれているのだそう。

 「ナゴヤ愛を形にしたら、きっと『鯱の形』なのではないだろうか?名古屋城の金鯱は夫婦。花恵さんと憲司さんのような睦まじい夫婦に違いない!」

 そう考えながら、鯱もなかを頬張ると、1つでは止まらず、つい2つ食べてしまうのでした。

(写真撮影:宮田雄平)

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