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2025.02.04

東海エリア2025年プロジェクト動向~愛・地球博、セントレア開港から20年、さらなる発展が続く東海エリア~

「仮称三井アウトレットパーク-岡崎」モール内CG(提供:三井不動産)

愛・地球博、セントレア開港から20年

 愛・地球博の開催、中部国際空港セントレアの開港から20年。2005年は、それに伴う伊勢湾岸自動車道の全線開通、東海環状自動車道の開通など、東海エリアの今に繋がるエポックメイキングとなった1年であった。その後、名古屋駅前の高層ビルの開発などが進み、全国から〝元気な名古屋″として注目された。
 あれから20年。東海エリアは来たるリニア新時代に向けてさらに次なる新しいプロジェクトが動いている。もちろん、この20年の間に社会や環境の変化もあり、時代の趨勢にも乗りながら地域は発展してきた。2025年も様々なプロジェクトが各地で進み、さらなる発展へと繋がっていく。

愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会のプレ・イヤー

 2025年のプロジェクトで注目されるのが名古屋市に7月に開業する「IGアリーナ」(新愛知県体育館)である。愛知・名古屋では、2026年にアジア・アジアパラ競技大会が開催されるが、その主要会場にもなる。最大収容人数は1万7千人と、屋内アリーナとしては国内最大級の規模を誇り、スポーツのみならず、音楽などのエンターテイメントが開催され、国内外からの集客、にぎわいづくりに期待される。こけら落としは、7月13日が初日の大相撲名古屋場所(中日新聞社共催)に決まっており、全国にそのインパクトが披露される。また、秋からはプロバスケットB1リーグの名古屋ダイヤモンドドルフィンズの本拠地として熱い戦いが始まる。
 アジア・アジアパラ競技大会のメイン会場となる瑞穂公園陸上競技場も改修工事が進められており、2026年にはスポーツの国際大会の受入体制が整う。また、会場を予定している愛知県内等の既存施設においても、競技の受入にあたって改修や整備も進められると想定され、地域全体として様々なスポーツ競技を受け入れる体制のレベルアップにつながるだろう。

IGアリーナ完成予想図 ©AIA corporation※画像はイメージです

都市の動き、産業の動き

 昨年の東海エリアの最大のトピックスは、10月に名古屋市鶴舞に開業した日本最大のスタートアップ中核支援拠点「STATION Ai」だ。新たな市場開拓を目指す新興企業のスタートアップの創出・育成のほか、国内外のスタートアップ支援機関・大学との連携等を通じて、様々な支援サービスが提供されるものである。開業時点で所属するスタートアップ企業は500社にのぼり、さらに会員数は開業以降も順調に伸びている。STATION Aiが目指す世界のイノベーション都市への期待はさらに高まる。
 そして、全世界的にも注目されるのが、静岡県裾野市でトヨタ自動車が開発を進めているる「ウーブン・シティ」である。昨年、モビリティのテストコースとしての第1期が完成し、今年の秋には住民が入居を開始し、第2期計画以降、将来的には約2,000人が入居する予定。いよいよ、全世界から注目される次世代技術の実証都市の第一歩が本格的に始まる。

愛知県初の本格的大規模アウトレットの誕生

 商業施設において今年の話題を独占しそうなのが、愛知県岡崎市に秋に開業を予定する「三井アウトレットパーク岡崎(仮称)」である。岐阜県、三重県、静岡県には既に大規模アウトレットがあり人気を呼んでいるが、遅まきながら愛知県では初の開業となる。東海エリアでは、三重県桑名市にある「三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島」に続く同系統のアウトレットの誕生となる。立地は愛知県のほぼ真ん中にあり、名鉄・名電山中駅から徒歩圏、新東名高速道路・岡崎東ICからも近いことから、愛知県内のみならず東海エリア各県広域からの集客にも期待される。170店舗が集結する見込みとなっており、愛知県内の商業マーケットを塗り替えるほどのインパクトを与えるだろう。
 そして、同じ愛知県西三河地方には、同じく三井不動産の開発による「三井ショッピングパーク ららぽーと安城」が4月に開業を迎える。ららぽーとブランドとしては、愛知東郷、名古屋みなとアクルスに次ぐ3店舗目で、人気ファッションや広大な飲食ゾーン、映画館など約210店舗が集結した大規模ショッピングモールが誕生する。

(仮称)三井アウトレットパーク岡崎モール内CG(提供:三井不動産)

国道23号名豊道路開通のインパクト

 2025年3月8日、愛知県名古屋市と豊橋市を結ぶ国道23号名豊道路の未開通区間であった蒲郡バイパスが開通し、全線開通となる。愛知県内の東西の観光交流、物流、産業の活性化に期待される。名豊道路は、静岡県の国道1号バイパスにも接続されており、名古屋から浜松まで信号のなしで行ける国道が開通することになる。愛知県内のみならず、静岡県西部との交流拡大にも大きく寄与するだろう。これで愛知県内を東西に横断する主要道路は、東名高速道路、新東名高速道路、名豊道路と3本となりトリプルネットワークによるさらなる発展に期待される。
 その他の主な道路整備では、2025年度内に、三遠南信自動車道の鳳来峡ICと東栄IC間(いずれも愛知県東栄町)の開通が予定されており、愛知県奥三河地方やさらに接続する浜松市天竜区地区との観光交流が促進されるだろう。また、2026年度中に全線開通が予定される東海環状自動車道においては、西ルートの一部、いなべIC~大安IC間が3月に開通を予定しており、一歩ずつ全線開通に向けた整備が進む。

各地で高級ホテル開業の動き

 全国への訪日外国人数が過去最高を記録するなか、東海エリアにおいても、外国人客も含む観光客を受け入れるホテルの開発が進む。特に目立つのが高級ラグジュアリーホテルで、コロナ期を経て、新たな時代に突入した感がある。
 名古屋市では、ホテルナゴヤキャッスルの建て替えによる「エスパシオ ナゴヤキャッスル」が10月に開業する。名古屋城の眼前に立地し、名古屋の迎賓館的存在として新たなスタートを切る。客室は108室(うち30室がスイートルーム)で、中部地区では最大の宴会場も備え、国際会議など、様々な催しの利用にも期待される。   
 静岡県熱海市には「NIPPON RESORT 無為自然-ATAMI-」(全18室)が4月に開業する。全室オーシャンビュー&天然温泉露天風呂付き客室の新築リゾートホテルで、自然に囲まれた環境で贅を尽くす。また、静岡県小山町には富士山の麓に「強羅花壇 富士」が夏に開業を予定する。「強羅花壇」としては箱根に次ぐ2館目で、全室スイートルームの42室が用意され、上質な和の空間とおもてなしでゲストを迎え入れる。

写真③「エスパシオ ナゴヤキャッスル」の完成イメージ取り寄せ中

全国規模のイベントが目白押し

 2025年は、愛知県、岐阜県、三重県で全国規模の様々なイベントが開催される。愛知県では3年に1度開催されるアートの祭典、国際芸術祭「あいち2025」が今年は秋に名古屋市と瀬戸市を会場に開催される。また、過去にも数回開催されているがものづくり県らしく「あいち技能五輪・アビリンピック2025」も開催される。岐阜県では、全国健康福祉祭「ねんりんピック岐阜2025」が岐阜県全域各地で開催されるほか、三重県志摩市・南伊勢町では、「全国豊かな海づくり大会~美し国みえ大会~」が11月に開催。伊勢市の伊勢神宮では、2033年の式年遷宮に向けた行事が5月より始まる。
 また、昨年同様、世界規模の自動車レースが行われる。FIA世界ラリー選手権「ラリージャパン2025」が、3年連続で豊田市、設楽町、恵那市などで11月に開催されるほか、鈴鹿サーキットではF1日本グランプリが今年も4月に開催される。 その他、愛・地球博20周年を記念して、同じ期間の3月25日~9月25日までの185日間にわたって、愛・地球博記念公園にて「愛・地球博20祭」が開催される。花をテーマとするイベントや市町村のブース出展など、期間中さまざまな催しが繰り広げられる。

たなか みつふみ
田中 三文

旅人総研 代表/
愛知大学 地域政策学部
非常勤講師

田中氏写真