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ナゴヤ愛

2022.04.13

第7回 晴れ着クオリティの普段着ロリータ

 日本を代表する織物産地で、世界三大生地産地のひとつでもある尾州地区。その中心・愛知県一宮市に高級毛織物の尾州生地とロリータファッションを掛け合わせてしまった女性がいます。

 ショコラさんは大好きなロリータを若い女性に気軽に楽しんで欲しいと6年前、市内にサロンをOPEN。

尾州ロリィタを着たショコラさん

 尾州生地とは、祖母が紳士服を仕立てていたことから出会いました。その風合いに惚れ込み、ロリータ服を作ることを思い立ちます。大量生産や化学繊維の台頭、後継者不足などで尾州生地が危機にあると知ると、ロリータ服で尾州生地の魅力を広めることができないか?と考えるように。

 片っ端から毛織工場に問い合わせますが、どこも黒やグレイなどの地味な製品ばかり。「ロリータなんて無理」と断られる中、最初に生地を提供してくれたのが鈴憲毛織(株)さんです。

 苦労の末、尾州生地の上品さを残したまま甘さを抑えた、まったく新しいロリータ服『尾州ロリィタ』が完成。もともと「パステル調のロリータはハードルが高いという人が多い。シックなロリータ服があれば着る人が増えるのではないか」と感じていたことも、尾州ロリィタを立ち上げた理由のひとつでした。

 その予想は当たり、ロリータ愛好家の若い女性だけでなく、「娘に着せたい」というお母さんから「年齢的にかわいい服をあきらめていた」中高年の女性まで、尾州ロリィタは大きな話題に。

 のこぎり屋根の工場から鳴り響くションヘル織機の音が、かつての尾州地区の風物詩。ショコラさんの祖母も使用していたというションヘルは、現在は製造されていません。

 鈴憲毛織さんと共に生地提供を受けている葛利毛織工業(株)さんは、ションヘルを約90年前から現在も使い続けています。

 ションヘルは人の手が必要な工程が多く、一枚の布を織るのに気が遠くなるような手間や時間がかかります。低速で織り上げる生地は、手織りのような風合いが魅力。

 同社は海外のハイブランドからも受注が舞い込みます。かなり難しい要求もされますが、どんな難問も「できない」と言わず「まずはやってみます」という専務の葛谷聰さん。

▲葛谷さんとションヘル繊維と一緒に

 設計図を書き、オルゴールのようなプログラムを一つ一つ組んで機械に設定。ションヘルの自由度は高く、アイデア次第でアレンジの幅は無限大です。

 特殊なケースでは、ナポレオン時代の生地の再現を依頼されたことも。現在では入手不可能な原料もあるため、完全な再現は難しいそうです。それでも80%程度は近づけることができ、現在も追求中とのこと。

 尾州の毛織物の良さは「普段着として着るとより実感する」と、 そろって話す葛谷さんとショコラさん。葛谷さんは工場で着るシャツもダウンベストも自社の尾州生地製を愛用。

 「お手入れが大変なのでは?」という筆者の問いに「この服、 50回くらい洗濯機で洗ったんですよ」とショコラさん。とてもそうは見えません。葛谷さんによれば、毛織物はたたんでネットに入れ、洗濯機ドライコースで1、2分回すだけで汚れが落ちるため、傷みにくく、しかも夏は涼しく冬は暖かいのだそう。

▲お手入れ簡単、機能性抜群の尾州毛織物

 尾州ロリィタが目指すのは『普段着ロリータ』。「かわいくて高品質な服だからこそ、毎日着て楽しんで欲しい」と語るショコラさん。日本が世界に誇る「尾州生地」と「Kawaii」の組み合わせは最強!!です。

(写真撮影:宮田雄平)