MARKETING MAGAZINE
マーケティングマガジン
ナゴヤ愛
2022.02.24
第6回
利用者ファーストのハイテク図書館
東海道新幹線「三河安城駅」のある街・愛知県安城市。半田市出身の童話作家・新美南吉が、女学校の教師として短い生涯の中でも充実した時間を過ごした土地としても知られています。 安城市の自慢のひとつが、「安城市中心市街地拠点施設アンフォーレ」とアンフォーレ本館の2階から4階にある「安城市図書情報館」です。
安城市図書情報館は2020年、先進的な活動を行う図書館に対して贈られる「Library of the Year」優秀賞・オーディエンス賞をダブル受賞。評価ポイントとなったハイテクさや充実したサービスについて、お話を伺いました。
2017年開館の同館は、全国で50ほどある同規模の自治体(人口15万人~20万人未満)の中で、年間の本の貸出数が全国1位。特に力を入れているヤングアダルトを中心としたコーナーは、「Light 」「Like」「Love」の「ら」をとり「らBooks」と名付けられ、2万2千冊を誇る充実ぶりです。
蔵書冊数だけではなく、ハード・ソフト面でも、とことんまで利用者目線にこだわった、さまざまな工夫がされています。
まずは本の並べ方。国内の図書館で採用されている日本十進分類法(NDC)に加え、独自に設定した13のジャンル別に並べることで、利用者が本を探しやすくなっています。
約870席ある座席では、おしゃべりも飲食も自由※。一般向けフロアでは、なんと飲酒も可能です。「静かにしなくていい図書館」では幼い子ども連れの来館者も増えています。(※コロナ禍では飲み物のみOK)
館内には「読書通帳機」を設置。1冊300円(市内在住の中学生以下無料)で購入できる専用の読書通帳を機械に通すと、借りた本のタイトルと価格が印字されます。本を借りれば借りるほど貯金がたまるので、どんどん借りたくなりますね。
通常の図書館では見かけないサービスが、ビジネス支援センター機能です。会社経営など事業に関する専門アドバイザーに無料で相談が可能。壁には、「頑張る事業者を『お節介なほど』『何度でも』徹底応援します」との文字が踊ります。これほど相談するハードルを下げてくれる、心強い言葉があるでしょうか。
広いバックヤードからは、コンテナに詰められた本が市の公民 館や小中学校全29校へと配送されていきます。小中学校へは、 朝の読書や調べ学習の本を貸し出ししています。これは全国的にも珍しい先進的な取り組みです。
建物脇には予約した本を時間外に受け取れる「予約本受取機」が設置されています。利用者カードを入れると、取り出し口から予約した本が出てくる仕組みです。借りた本を時間外に返却できる「返却ポスト」のある図書館は数多くありますが、予約本受取機のある図書館は、同館だけとのこと。さすがハイテク図書館!
同館では、全国どこに住んでいても貸出カードを作成できます。これは、帰省や出張などで来安された方々にもぜひ利用してほしいという配慮から決まったこと。
「図書館は『市民の知る権利』を保障する施設ですので、市民に『コレについて知りたい』と言われれば『草の根を分けても探し出す』という姿勢でサービスに努めています」とは、同館司書の言葉。利用者への愛にあふれたハイテク図書館、一度は行くべし!
(写真撮影:宮田雄平)