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ナゴヤ愛

第17回
ナゴヤ、東と西の交差する場所

2024.01.23

 ナゴヤは東か西か、どちらでしょうか?最初に結論らしきものをいえば、「ナゴヤ(愛知県)は西日本」の認識が多数派のようです。筆者が子ども時代、正月の風物詩「新春かくし芸大会」でも愛知県は「西軍」でした。そのため、筆者の中にも「名古屋は『西』のイメージ」が定着しました。

 しかし都道府県別対抗のイベントに参加したときに、愛知は東に含まれると聞き、愕然。47都道府県では、愛知は22番目に東に滑り込み、やや西にある福井がそれに続きます。都道府県の数では、西は24番目に当たるお隣三重県から、というのが大体の見解のようです。

方言とお天気

 日本国民には「ナゴヤは西日本」派が主流といえども、ナゴヤの文化には「東」に含まれるものが少なくありません。

 まずは方言。ナゴヤの言葉は東日本方言のひとつとされ、「岐阜・愛知方言」と呼ばれるそうです。確かに、名古屋弁と岐阜の言葉は似ています。イントネーションの大部分は関東流で、たまに関西風の言い回しがあるという感じでしょうか。関西弁の「あかん」が「いかん」になったり、「ほかす」が「ほかる」になったりします。

 同じ愛知県内でも三河地方の言葉は静岡弁に近く、徳川家康公や織田信長公の勢力図が、現代にも言葉として残っているのでしょう。

 一方、同じお隣でも三重と愛知の間にはっきりと境界線があり、三重県は関西弁です。四日市や桑名などは名古屋市内への通勤圏。鉄道で数十分の距離ですが、文化的には隔たりを感じます。

 気象庁による天気予報の区分では東日本に含まれます。気象庁は日本を4つに分けて北海道と東北は北日本、近畿から九州までは西日本、その間の関東甲信・北陸・東海を東日本としているためです。(残り1つは沖縄・奄美)

ぜんざいは関西風、きつねとたぬきは関東風のナゴヤは、突っ込みどころ満載かも

食文化は東寄り

 食に関しても、ナゴヤはやや東寄りです。きつねは油揚げ、たぬきは揚げ玉をのせたうどんやそばのことで、これは東日本式。西日本では、きつねはうどんでたぬきはそばと決まっており、どちらも油揚げがのります。関西の「たぬき」は関東では「きつねそば」になるのがややこしい。

 日清食品のカップ麺どん兵衛(どんべえ)は、「天下分け目の関が原」を境に東西で味が異なります。岐阜の関が原で分けると、ナゴヤは東で「かつおだし+濃口しょうゆ」。そもそもナゴヤには「かつおだし」と「濃口しょうゆ」を愛用している家庭が多いので、これは理にかなっています。ちなみに西のどん兵衛は「昆布だし+薄口しょうゆ」です。

 ただ、東海地方には「たまり醤油」という独自のものがあり、全国的にも珍しい豆味噌文化であることはよく知られたところ。

 餅も関が原を境に「西は丸餅」とされ、名古屋は「東の角餅」です。

 しかし、ナゴヤが「東」寄りなのはここまで。

 餅の入る「ぜんざい」は西。東は汁気のないものをぜんざい、汁気のあるものをしること呼びますが、ナゴヤを含む西では、汁気のあるもののうち、つぶあんをぜんざい、こしあんをしること呼びます。

 うなぎの焼き方にも東西があります。背開きで蒸しの入る関東風と腹開きで蒸さない関西風。境界線は浜名湖あたりのため、うなぎの名産地・浜松ではどちらの味も楽しめるとか。浜松より西にあるナゴヤはもちろん関西風。おだしなどでいただく「ひつまぶし」はあのパリッとした関西風だからこそ「うみゃあ」のです。

中島は「ナカジマ?」「ナカシマ?」

 地質学的にはどうかといえば、フォッサマグナ(中央地溝帯)の西縁(糸魚川静岡構造線)の西側となり「西南日本」に含まれます。ちなみにフォッサマグナの東側は「東北日本」。

 電気の周波数は60ヘルツで西(東は50ヘルツ)、NTTにおいても西日本に含まれます。

 個人的に気になって調べたのが「中島さん」。この姓、どうやら東では「なかじま」と濁り、西では「なかしま」と清音なのです。著名人でいえば、恨み節で歌う中島(なかじま)みゆきさんは北海道出身で、東京都世田谷区に住むカツオの友達も「ナカジマ」。一方、鹿児島出身のシンガーは中島(なかしま)美嘉さんではありませんか!納得です!

 実は愛知県は中島(なかしま)姓発祥の地のひとつといわれています。尾張国北西部に中島氏の治める「中島郡」があり、2005年まで中島郡は存在していました(現在は稲沢市などに編入)。濁らない「ナカシマ」なので「西日本」です。

 こうしてみると西とも東とも決めづらい…

全国的には「西」として認識

 ここまでの結果では、愛知県は地理的には西日本、文化的には東日本なのでは?という気がします。しかし、2019年Jタウンネットのアンケートによると、日本国民の7割近くが「ナゴヤは西日本」と答えているのだそうです。

 ただし、アンケート結果をじっくり見ていくと、ナゴヤ以東と以西とでは返答の比率が異なります。東へ行くほど「ナゴヤは西日本」と答える人が多く、逆に西へ行くほど減り、関西以西では過半数が「東日本」と返答する県が増えます。そりゃ九州の人から見れば、ナゴヤも東京も東の果てに感じられるでしょう。

ナゴヤは東でも西でもない真ん中!実はやっぱり文化の中心!?

 では筆者の見解はといいますと、実際のところ西とも東ともピンと来ず、「ナゴヤは真ん中」というのが正直な感覚です。日本列島の中央に位置する「中部地方」の中心都市・名古屋。このコラムを連載している中日新聞の「中日」も「中部日本」の略です。

 「ナゴヤは真ん中」の立場をとる企業もあります。JR東海と高速道路のNEXCO中日本の本部はともに名古屋。本州の都府県の中で、JR本州3社のうちJR東海のみが走っているのは岐阜県と愛知県だけ。JR東海の正式名称は日本語では東海旅客鉄道ですが、英語ではCentral Japan Railway Company。まさに「日本の真ん中」なのです。

(取材・文 / 陽菜ひよ子)

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