MARKETING MAGAZINE
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INTERVIEW
2018.05.28
安心・安全・安定的に
ー はじめに、全農さんの役割を教えてください。
織田 農畜産物の販売や、肥料などの生産資材の安定供給することを念頭に、商社のような機能を果たしています。また、組合員の所得の増大や農業生産力の拡大などが主な役割です。
ー 昨年、14年ぶりの新品種「ひゃくまん穀」のネーミング決定や、発売開始の際にご出稿して頂き、有難うございました。紙面に対する反響や、「ひゃくまん穀」というお米の特徴、評判などをお聞かせください。
織田 パッケージの赤色が、今までにない斬新な色を使っていることもあり、各メディアさんに取り上げてもらった際に非常に目立ち、大きな反響がありました。全農が運営する、全国各地の農産物や名産品が買える通販サイト『JAタウン』でも、新潟県の新米・新之助に次いで2位の売り上げでした。
ネーミングも一般公募を行い、9千通を超える応募があったと聞いています。「自分たちが投票して選ばれた名前」ということと、「ひゃくまん穀」という名前が石川県の加賀百万石と重なり、皆さんに親しんで頂いています。
食味的には、米粒自体が非常に大きく、炊いた時の粒が大きいため、水分がしっかり入り込み、美味しく感じます。昨年10月5日の発売にさきがけて、「ひゃくまん穀」を使ったおにぎりの無料配布を県内5カ所で実施しました。冷めていても美味しい、と好評でした。
少し専門的になりますが、品種は普通のお米より遅く実る晩稲(おくて)になります。農家にとっては、メインとなるコシヒカリと田植えや刈り取りの作業時期をずらすことができ、さらに収穫量はコシヒカリより多いなどのメリットもあります。
ー 昨年1年間で登録申請されたブランド米は、全国で42銘柄にのぼり、それぞれの産地がPRを展開しています。「ひゃくまん穀」をはじめ、石川県の農産物の魅力を打ち出し、ブランド化していくことが重要になって来ますが、何か取り組まれていることはありますか?
織田 各県競い合って、新しい品種を作り、お米を売ろうとしているのは事実です。なぜなら、お米の消費量は年々減り続けています。新しい品種を消費者に受け入れてもらい、少しでも消費量を上げたい、という願いは一緒だと思います。発売時期が重なったのは偶然です。
私達が一番に考えているのは、まずは県内の方々にしっかり認知して頂き、食べてもらう事です。県外への取り組みとしては、生産者と県、流通関係者、JAグループ等の専門機関で「ひゃくまん穀」の普及推進委員会を作りました。委員会が中心となって戦略的に普及拡大していきます。
ただ、消費者に選んで買ってもらい、初めてブランドと認知されるもので、戦略的にブランド化しようと思っても、加工品と違い、農産物には馴染まないと思っています。食べた方にどれだけ美味しいと評価して頂けるか、より多くの評価を得てブランドとして育っていくのだと考えています。
ルビーロマン(=石川県が開発した高級ブドウ)がまさにそうです。大粒で甘味があり、消費者に受け入れられました。昨年の初競りでは、1房111万円の値が付き、ニュースにもなりました。しかし、私たちの最終目的は、ブランドを目指しているのではなく、基本的に消費者に美味しいと言って頂けることです。
昨年、梨の「加賀しずく」では受給バランスがくずれ、1玉千円を超えました。今冬は天候不良による葉物の野菜が高騰しました。実は農家の人達は高値で売れることを喜んでいる訳ではなく、消費者へ安定した食糧を供給したいと思っている人が大半です。農家の人から言われることですが、「儲けのためだけに作っている訳じゃない。日本の食糧を支えるために、作ってきた。儲けだけを目的にやっていたら、やめていたかもしれない」と。
ー 北陸新幹線が開通して早や3年が経過しました。何か変化はありましたか?
織田 歴史的に、石川県で採れたお米や野菜、果物は、主に関西方面に流通して来ました。北陸新幹線のおかげで、関東の人がたくさん来て、石川県の食べ物を食べて「ここより美味しい物が揃っているところは他に無いです」と言って頂けます。実は、石川県は全国有数のスイカの産地です。サツマイモの五郎島金時も石川県の特産です。レンコンや梨等、美味しい食べ物がそろっています。
ー 現在抱えている課題や、問題はありますか?また我々マスコミに望むことがあれば教えてください。
織田 農業は本当に大変なんです。一生懸命育てたものが、一晩の大雨や雪等ですぐダメになってしまう。農業改革と言われますが、昔と比べれば、私たちの組織はスリム化され、サービスの質も向上しています。もっと色々な事にチャレンジしないといけないことは承知しています。
しかし、農業改革に関しては、国が果たさないといけない役割が多岐にわたります。JA、全農だけが改革をすすめてもうまくいきません。国とJAと両輪で行っていかないと成功しません。マスコミの方には、一面だけをとらえず、現状を理解して頂き、正しく報道して欲しいです。
一番の課題は、どうすれば組合員に満足してもらえて、消費者にも美味しいものを届けられるか。JAグループは、安心・安全な食糧を、安定的に消費者にお届けすることが一番の務めだと思っています。
JA全農いしかわでは、1年程前にJAのアンテナショップとして焼肉店「肉匠Jade金澤」を駅前に開業しました。石川県の安全・安心で新鮮な食材がたのしめるようになっていますので、石川県にお越しの際には、お立ち寄りいただければと思います。
ー 本日は有難うございました。