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2025.12.16
東海エリア2026年プロジェクト動向~アジア・アジアパラ競技大会の開催、そして注目の栄再開発~
旅人総研 代表/愛知大学地域政策学部非常勤講師 田中三文
愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会の開催
2026年のビッグイベントとして注目されるのが、愛知・名古屋を中心に開催されるアジア最大のスポーツの祭典「第20回アジア競技大会」(2026/愛知・名古屋)[2026年9月19日~10月4日]及び「第5回アジアパラ競技大会」(2026/愛知・名古屋)[2026年10月18日~10月24日]である。アジア競技大会が日本で開催されるのは1958年の東京、1994年の広島に次いで3回目。アジアパラ競技大会は日本では初開催となる。アジア大会は、41競技、アジア45の国及び地域、最大15,000人の選手の参加が予定され、アジア・パラ競技大会は、18の競技、アジア45の国及び地域、約3,600~4,000人の参加が予定されている。
会場は愛知県内を中心に、一部競技は愛知県外において実施される。主な会場は改修が進む「パロマ瑞穂スタジアム」や2025年7月に開館した「IGアリーナ」などでスポーツの国際大会の受入体制が2026年に整うことになる。また、会場を予定している愛知県内等の既存施設においても、競技の受入にあたって改修や整備も進められると想定され、地域全体として様々なスポーツ競技を受け入れる体制のレベルアップにつながるだろう。また、ボランティアは両大会総数で約4万人が想定されており、選手、地域、市民などが一体となった大会として開催される。

スポーツイベント、スポーツ施設の開業
国際スポーツ大会で盛り上がる2026年であるが、世界規模の自動車レースも継続して行われる。FIA世界ラリー選手権「ラリージャパン2026」は、4年連続で豊田市、設楽町、恵那市などで5月に開催されるほか、鈴鹿サーキットではF1日本グランプリが4月に開催される。
スポーツ施設では、球団創設90周年を迎える中日ドラゴンズの本拠地・バンテリンドーム ナゴヤ(名古屋市)に新たに「ホームランウイング」と「アリーナシート」がプロ野球シーズン前に設置される。ホームランの増加に期待されるとともに、選手のプレーを間近で見られる楽しみも増える。その他では、三重県志摩市に世界最大規模のサーフィンウェーブプール「パーフェクトスウェル志摩」が夏に開業するのも話題だ。志摩市では、サーフシティが推進されており、新たな施設の誕生で活動に拍車がかかるものと思われる。

注目される栄の再開発
2026年の都市開発で最も注目されるのが、名古屋・栄の一等地に誕生する再開発ビル「ザ・ランドマーク名古屋栄」である。地上41階、高さ約211mと栄地区では最高層ビルとなる。低層階にはパルコと大丸松坂屋名古屋などが手掛ける商業施設「HAERA」が初夏に開業を予定し、中層階にはオフィスとシネマコンプレックス、そして高層階には、ヒルトンのラグジュアリーホテルブランドである「コンラッド名古屋」が夏に開業を予定する。はす向かいには2024年4月に全面開業した地上33階・高さ約159mの中日ビルがあり、栄のシンボルとなる2つのタワーが並び、栄の新時代を迎えることになる。
都市開発の話題としては、静岡県裾野市でトヨタ自動車が開発を進めている実験都市「ウーブン・シティ」が引き続き注目される。2025年9月に第1期エリアが開業し、全世界から注目される次世代技術の実証都市の第一歩が本格的に始まった。また、愛知県常滑市では、中部国際空港島及び周辺地域において、先端デジタル技術等を活かした「あいちデジタルアイランドプロジェクト」が展開されている。
その他の話題としては、岐阜県飛騨市に4月に開校する「コー・イノベーション大学」があげられる。飛騨古川駅東エリアにおける再開発事業「soranotani」の一画を占めるもので、再開発全体の建築設計は、「大阪・関西万博大屋根リング」を手掛けた藤本壮介氏が担うことも話題を呼ぶであろう。

観光・イベントの動向
2026年大河ドラマ「豊臣兄弟!」の放映に伴って、豊臣ゆかりの地、名古屋市中村区では「豊臣ミュージアム/豊臣兄弟!名古屋中村大河ドラマ館」が1月から約1年間にわたって開館する。2024年の「どうする家康」では、愛知県、静岡県で各ゆかりの地で多くの観光客を集めたが、2026年も豊臣ブームを引き起こすであろう。
「豊川稲荷」(愛知県豊川市)では、72年ぶりの御開帳が11月に行われる。豊川稲荷表参道には新しい商業施設「表参道テラス縁福」も2025年末に開業し、豊川駅前には新しいホテルの開業も予定されるなど、町全体の受入体制が整うことになる。また、三重県伊勢市の伊勢神宮においては2033年の式年遷宮に向けた行事が始まっており、年々遷宮機運が高まっていく。
その他、観光地のイベントとしては岐阜県下呂市で9月から11月に行われるアートイベント「下呂Art Discover 2026」も初開催として注目される。
観光施設系では、静岡県小山町の「(仮)おおみかテラス」や同藤枝市の「ふじえだ陶芸村」の道の駅、また三重県伊勢市では「伊勢志摩とれとれ産直マルシェ」など、食と物産などをメインとする観光拠点が各地で誕生する。

ホテル・商業施設の動向
ホテルは前述した「コンラッド名古屋」が大きな話題であるが、地方においても、岐阜県飛騨高山のアソシアホテルが「ヒルトン高山リゾート」にリブランドしたり、三重県志摩市の「NEMU RESORT」がリニューアルオープンするなど、観光地のホテルの動きがあるほか、各地でビジネスホテル開業の動きが見られる。
商業施設では、イオン系の「イオンタウン岐阜北方」(岐阜県北方町)や「イオンスタイル静岡」(静岡県静岡市)が開業するほか、都市開発における「NAKAGAWA CANALDOORS」 (名古屋市)、「JR岡崎駅東口複合施設」(愛知県岡崎市)や「フォレストモール東海太田川」(愛知県東海市)などが開業を迎える。
新たな道路の開通
主な道路整備では、2025年度内(2026年3月予定)に、三遠南信自動車道の鳳来峡ICと東栄IC間(いずれも愛知県東栄町)の開通が予定されており、愛知県奥三河地方やさらに接続する浜松市天竜区地区との観光交流が促進される。同道路は、新東名高速道路・浜松いなさJCT及び東名高速道路・三ケ日JCTと接続されており、これまでの観光マーケットを大きく広げる可能性がある。


たなか みつふみ
田中 三文
旅人総研 代表/
愛知大学 地域政策学部
非常勤講師