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東海エリア2022年プロジェクト動向 ——————— 国内外から注目の「ジブリパーク」が今年11月に誕生

2022.02.24

【愛知県長久手市に「ジブリパーク」誕生】

 今年の東海エリアで最も注目されるプロジェクトはなんといっても「ジブリパーク」である。2005年の愛・地球博(愛知万博)開催から17年、その跡地である愛・地球博記念公園(愛知県長久手市)の一画にスタジオジブリの世界観に浸れる公園施設「ジブリパーク」が誕生する。

 まず11月に第1期として「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」が開園し、その後第2期として「魔女の谷」「もののけの里」が来年度の開園を予定する。3エリア開園時の年間想定来園者数は約100万人、5エリア開園時には約180万人となっており、東海エリアを代表する集客施設が新たに加わることになる。スタジオジブリの作品は国内のみならず、アジアをはじめ世界中で知られていることから、全国各地からはもとより、インバウンドが回復する頃には、世界中からの来訪にも期待される。尚、管理運営は、スタジオジブリと中日新聞社が共同設立した株式会社ジブリパークが担う。

 東海エリアでは、昨春、自然豊かな三重県多気町に「食」と「癒し」をテーマとした大型複合リゾート施設「VISON(ヴィソン)」が誕生し、人気を集めている。タイプは異なるものの、全国から注目される集客施設が立て続けに誕生することになる。

 また、今年は、国内最大規模の国際芸術祭「あいち2022」(愛知県名古屋市、一宮市、常滑市)が7月30日から10月10日までの73日間開催される。テーマは「STILL ALIVE」。芸術監督に片岡真実氏(森美術館館長、国際美術館会議会長)を迎え、国内外の80組程度のアーチスト及びグループの作品が展示される。こちらも全国各地からの来訪に期待される。

ジブリパーク「ジブリの大倉庫」 © Studio Ghibli

【高級ホテルや新たな商業施設、MICE施設等の展開】

 今年の東海エリアは、世界ブランドのホテルが続々誕生することも注目される。3月には、インターコンチネンタル・ホテルズ・グループの「ホテルインディゴ犬山有楽苑」(愛知県犬山市)とマリオット・インターナショナルの「コートヤード・バイ・マリオット名古屋」(名古屋市中区)、秋には、ハイアットが展開する「富士スピードウェイホテル」(静岡県小山町)が開業する。同ホテルには、トヨタ博物館が監修する「富士モータースポーツミュージアム」も併設されることも注目される。これらのホテルはいずれも東海エリアにはこれまでなかったタイプであり、国際的なブランド力を生かした観光・ビジネス等の新しい需要が創出されるであろう。犬山市には、昨年7月に名鉄グループの「ホテルミュースタイル犬山エクスペリエンス」が開業しており、国宝犬山城や博物館明治村などを巡る滞在型観光地としての魅力がさらに充実することになる。

 また、商業施設では、「(仮称)イオンモール土岐」(岐阜県土岐市)や「イオンタウン北方」(岐阜県北方町)等が今秋新規オープンを予定するほか、既存施設の閉店・閉館後の再活用・利用により生まれ変わる施設も誕生する。主なものでは、丸栄百貨店(名古屋市中区)跡地の再開発施設が3月に予定されるほか、「三越豊田」(愛知県豊田市)も昨年閉店した松坂屋跡地の一部に出店、イオン上飯田店は、新たなイオンブランドである都市型SC「イオンそよら上飯田」(名古屋市北区)として再生されるなど、各地で新しい展開が進んでいる。

 集客施設系で注目されるのが、今年10月に開業を予定するポートメッセなごや(名古屋国際展示場)新第1展示館である。現第1展示館を移転整備するもので、施設規模は現在の1.4倍となる約2万㎡に拡張される。無柱の展示館としては国内最大級で、移動式観覧席5,800席が設けられ、アリーナコンサートでは観客1万5,000人の収容規模となる。展示会のみならず、スポーツやコンサートや各種イベント等、多様なニーズに応える施設となる。

建設が進む「ポートメッセなごや・新第1展示館」(名古屋市港区)※2022年1月8日撮影

【都市開発の新たな動き】

 東海エリアにおいて大きな転換期となるビッグ・プロジェクトが2027年以降に予定されるリニア中央新幹線の開通である。既に、名古屋の都心部においてはリニア開通後をにらんだ都市開発が進んでおり、特に、栄や錦などの中心部においては、大規模マンション開発が続くほか、商業施設やホテル、オフィス等を含む複合施設の計画・構想も目白押しの状況である。リニア中央新幹線の開通は名古屋、愛知県をはじめとする東海エリアの生活、社会、都市の姿を大きく変えていくことは間違いない。

 そして、地方都市においても駅前あるいは繁華街立地の商業ビル等のスクラップ&ビルドの動きが続き、まちのリノベーションが進んでいる。愛知県豊橋市では、昨年秋に旧商業ビルの跡地に、まちなか図書館や食品ショップやまちなか広場、マンション、オフィス等からなる「em Campus」が開業し、新たな賑わいを創出するとともに、市民のコミュニケーションの場として機能している。さらに隣接地の旧商業ビルも解体され再開発が進み、現施設と一体化し完成を見ることになる。岐阜県岐阜市の「柳ケ瀬グラッスル35」は、同市最大の繁華街に位置する再開発で、岐阜県下最大戸数の335戸のタワーマンションが来年度内に完成する。三重県亀山市ではJR亀山駅前の再開発ビル「Kitto terrace」が完成する。こちらも今年マンションが竣工し、来年には図書館が開館する予定となっている。愛知県小牧市においても、昨年3月に名鉄・小牧駅前に小牧市立図書館が開館しており、図書館がまちの中心部における機能として、また市民が気軽に立ち寄れるサードプレイスとしても注目されていることがわかる。

 また、都市開発を大きな視点で見れば、これからの社会に適合する未来都市づくりへの動きからも目が離せない。コロナによって生活様式が変わったばかりではなく、デジタル社会やSDGsへの都市としての対応等の取り組みが各地で始動している。トヨタ自動車が静岡県裾野市で開発を進める注目の未来実験都市「WOVEN CITY」(ウーブン・シティ)も昨年2月に着工し、徐々に姿を表してくることになる。愛知県常滑市では「あいち・とこなめスーパーシティ構想」が掲げられるなど、東海エリア各地の都市においても、スーパーシティ、スマートシティ、SDGs都市などを標榜する未来都市に向けた動きからも目が離せない。

田中 三文

たなか みつふみ

三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱

政策研究事業本部

上席主任研究員

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