MARKETING MAGAZINE

マーケティングマガジン

ナゴヤ愛

2021.10.21

第4回
小倉トーストは地球を救う?

ナゴヤのことに詳しくない人にも「喫茶店でコーヒーを頼むとおまけがつく」いわゆる「モーニングサービス」はよく知られています。そのナゴヤ名物「モーニング」を陰で支えるのが業務用パンメーカーです。

 業務用パンメーカーは、ナゴヤの「モーニング」に特化して成長してきた業態。モーニングのない他地域の喫茶店では、そこまで多くのパンを消費するわけではないため、大手製パンメーカーや個人のお店のパンを購入するケースがほとんどなのだそう。

 いずれも愛知県内に本社を持つ、業界大手の本間製パン、エースベーキング、永楽堂の3社で名古屋市内の喫茶店の約9割をカバー。お互いにライバルとして火花を散らしてきた3社が、手と手を取り合ってある企画を立ち上げたことが、ナゴヤでは大きな話題となりました。

▲老舗業務用パンメーカーの夢のコラボ

 今回お話を伺ったのは本間製パン営業部長・佐伯信哉さんとエースベーキング社長・吉田昌容始さん、永楽堂広報担当・高野仁美さんの3名。

 きっかけはコロナ禍です。緊急事態宣言で大打撃を受ける喫茶店を盛り上げたい!と考えた永楽堂・高野さん。Twitterで本間製パンさんと交流するようになり、思い切って一緒に何かしませんかと提案。快諾した本間製パンさんがエースベーキングさんを誘い、こうして業界の誰もが驚く夢のタッグが生まれました。

 まずは「何をするか」を決めるまでに紆余曲折がありました。 ナゴヤならどこの喫茶店にも材料があるという事が決め手となって「小倉トースト100変化」に決定。名古屋めし・小倉トーストのアレンジメニューを100種類考案する、壮大な企画です。

 決めたものの、本当に100種類もメニューが集まるのか、最初は不安しかなかったそうです。永楽堂さんでは社員食堂にアイデアBOXを設置して全社員に広く公募し、エースベーキングさんでは営業部員全員に2つメニューを考案してもらう、などといった努力の甲斐あり、70種類のメニューが集まりました。残り30種はクラウドファンディングで支援してくださった一般の方々と一緒につくりあげ、無事100種類達成。

▲編み出された個性派メニューたち!

 100種のメニューはnote『小倉トースト100変化で愛知の喫茶店を盛り上げたい!』でご覧になれますが、どれも個性派ぞろい。モンブランやティラミスなどの「映える系」から、まさかの「あんかけパスタ」「台湾ラーメン」「きしめん」など他の名古屋めしとのコラボまで!いろんな意味で試してみたい逸品ばかりです。 また、小倉トーストのアレンジメニューを食べられる喫茶店を紹介したMAPも公開中。

▲ついに、夜のお店にも進出!?

  今後の目標については「2021年のグルメトレンドに『小倉トースト』を入れたい」「『小倉トースト』と『あんバタートースト』の名称を統一したい」などといった大きな野望を掲げます。

 今回コラボを思いついた永楽堂・高野さんの以下の言葉が印象的でした。「コロナでパンが売れなくなって、最初はどうしたら自社のパンが売れるかだけを考えていました。でも喫茶店の元気がないのに自社のパンだけが売れる事はないということに気づいたんです。喫茶店が元気だからこそ、パンが売れる。そしてそのためには地元の人たちや地元企業が元気で喫茶店に行ける世の中でなくちゃいけないんだと気づきました」

 長引く不況やコロナの影響で元気のない日本。元気を取り戻すには、業界などの垣根を超えて協力し、応援し合うことがもはや必須といえるでしょう。「小倉トースト100変化」の成功はナゴヤ、ひいては日本を救う原動力になるかもしれません。