MARKETING MAGAZINE
マーケティングマガジン
ナゴヤ愛
2021.04.13
第1回
進化形ナゴヤ飯
ナゴヤの人はとってもシビアです。どんなにおいしいものでも、それだけではナゴヤの人は満足しません。支払ったお値段に照らし合わせて、お値段以上の価値が認められないと、ナゴヤでは受け入れられないのです。それがナゴヤ人の好きな「お値打ち」という言葉によく表れています。
そんなナゴヤではここ数年、名物の名古屋めしが進化して来ています。面白いことに、その進化の仕方にも、ナゴヤ人らしさが出ているのです。
名古屋めしはコッテリと味が濃く、個性的な印象ですが、ナゴヤ自体は保守的な土地柄。ナゴヤの人は新しいものが好きですが、簡単には納得しません。話題の店がナゴヤにできても行列ができるのは最初だけ。ナゴヤで新しいお店や商品が定着することは簡単ではありません。
しかし、一度好きになればトコトン愛することもナゴヤの人の特徴。そんなナゴヤ人にとっては、まったく新しいものではなく、すでにナゴヤの街に馴染んだものにプラスアルファされたものであれば、安心して手が出せるのです。
つまり、既存の定番名古屋めしに別のものを掛け合わせれば、ナゴヤ人にも気軽に受け入れられます。かつ、掛け合わせることでナゴヤ人の大好きな濃い味に仕上がるのです。それが現在の「進化系名古屋めし」の特徴。
辛い味噌味のひき肉が乗った「台湾ラーメン」は、進化して「台湾まぜそば」となり、すっかり新名古屋めしとして定着しました。辛い味噌ひき肉は「台湾ミンチ」と呼ばれるようになり、その後「台湾ミンチ」の乗ったメニューに「台湾〇×」と名付ける店が続出しています。麺類だけでなく、チャーハンやオムライスなどご飯との相性も抜群です。
卵を敷いた鉄板にナポリタンパスタを乗せた「鉄板ナポリタン」にも、進化系が登場。味噌味のナポリタンやパスタの上にナゴヤ名物「どて煮」を乗せる(名東区『喫茶 亀』)といった「名古屋めしの掛け合わせ」で、新しい名古屋めしが次々と生まれています。
また「鉄板+卵」はまさに“鉄板”ですが、その上にパスタ以外を乗せる変化形も現れました。チャーハンやヤキソバなどバリエーションは無限です。
そして鉄板にあの小倉トーストを乗せてしまったのが、四間道にある『喫茶ニューポピー』。鉄板の上でバターとアイスクリームがじゅわ~っととろけるだけでもたまらないですが、さらにコーヒー入りのシロップをかければアフォガード風。アフォガードと言えばイタリアのデザート、最後はイタリアンに落とすところもナポリタンと同じではありませんか。「鉄板×小倉トースト=名古屋めし×名古屋めし」は、ナゴヤの人の大好きな、濃いけれど安心して食べられる味なのです。
ニューポピーのある四間道は江戸時代の城下町の面影残る街並みが魅力で、今ナゴヤで最も注目されるスポットの一つ。ナゴヤ人の「本物をじっくり見極める」気質は江戸時代の尾張徳川家の治世によって育まれたと言われます。
芸事や茶の湯などが盛んで、豊かな文化が花開いた江戸時代のナゴヤに思いを馳せながら、最新の名古屋めしに舌鼓を打つ、なんていかがでしょうか。
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イラストレーター&文筆家&漫画家
陽菜 ひよこ Hina Hiyoko
愛知県清須市生まれ。3歳より名古屋市在住。関西に2年、関東に 14年住んだのちUターン。2006年『やさしい写仏ぬり絵帖』(ダイヤモンド社)、2015年『アトピーの夫と暮らしています』(PHP研究所)を出版。イラスト実績はNHKテレビ番組・書籍・広告・新聞小説・自治体・イラスト講師など多数。
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