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2023.02.28

東海エリア2023年プロジェクト動向
「ジブリパーク」の第2期開園と「家康公」効果に期待

【「ジブリパーク」の魅力がさらに充実】

 昨年11月1日にオープンしたジブリパークには、国内各地から多くの来園者があり、愛知県及び東海エリアの新名所として人気を呼んだ。「ジブリパークのある愛知」として、国内外に愛知県の存在を広く知らしめるとともに、訪れたくなる愛知県のイメージを高めることに繋がった。また、海外個人向けチケットも今年1月10日から販売開始され、外国人観光客の目的地としても注目が高まっている。

 昨年11月1日に第1期の3エリアが開園した「ジブリパーク」であるが、今年以降もさらに魅力は充実する。第2期エリアとして、今年の秋には「もののけの里」、来年3月には「魔女の谷」が開園を予定。また、「もののけの里」近くの愛・地球博記念公園内の芝生広場には、映画『猫の恩返し』の「猫王の城」をモチーフにした遊具(迷路や滑り台など)が今年の夏までに設置される予定となっている。

 ジブリパークも公園内施設であるが、他地域でも、公共の都市公園内の魅力創出の動きが目立つようになってきた。名古屋市の「鶴舞公園」には商業ゾーン「きっさこ鶴舞」が春に開業、愛知県津島市の天王川公園にも、芝生広場などのほかにスターバックスコーヒーの出店が予定され、同豊川市の「赤塚山公園」や三重県津市の「中勢グリーンパーク」でも、新たな飲食・物販ゾーンや遊びゾーン等の新設が予定されている。鶴舞公園以下のこれらの各種施設はいずれもPark-PFI制度により民間事業者が整備するもので、今後もこの事業手法による都市公園の魅力づくりが進むであろう。

ジブリパーク「もののけの里」のイメージスケッチ
(愛知県長久手市) ©️ Studio Ghibli

【大河ドラマ効果で「家康公ゆかりの地」に注目】

 大河ドラマ「どうする家康」の放映が始まり、今年は1年間、家康公への関心が高まることになる。東海エリアでは、「家康公生誕の地 岡崎」(愛知県岡崎市)、「徳川家康公ゆかりの地 新城市」(同新城市)「徳川家康公ゆかりの地 出世の街 浜松」(静岡県浜松市)、「家康公が愛したまち静岡」(同静岡市)と、徳川家康公のゆかりを標ぼうする町が多く存在する。

 岡崎市、浜松市、静岡市には、大河ドラマ館も開設されることから、全国から多くの観光客が訪れることが予想される。名古屋観光コンベンションビューローと三菱UFJリサーチ&コンサルティングによれば、「どうする家康」の放送による愛知県への経済効果は約393億円にも及ぶと試算しており、宿泊や飲食、物販、交通などへさまざまな効果に期待される。岐阜県関ケ原町には、家康が東軍の将として戦い勝利を収めた関ケ原の戦いの地があり、岐阜関ケ原古戦場記念館を中心に1年中様々なイベントや事業などが展開される。  また、上記以外においても、大河ドラマの放映を契機に、観光誘致に結び付けようと動いている地域がある。生誕の地・岡崎と出世の地・浜松の間に位置する愛知県東三河地方では、設楽原の戦いなど家康ゆかりの地を結ぶ「三河・遠州 家康街道」を推進し、両地域間の連携による広域での周遊観光を促している。

浜松城と「どうする家康 浜松 大河ドラマ館」
(静岡県浜松市)

【進む名古屋の都市開発~リニア新時代への備え】

 今年の東海エリアのプロジェクト動向を見てみると、依然、名古屋の都心部の開発の動きが目立つ。2027年以降に予定されるリニア中央新幹線の開通を念頭に置き、開通後の需要やニーズ、社会の流れの変化を見通した都市開発プロジェクト(オフィスビル、マンション、商業、ホテルなど)が動いている。特に、名古屋駅周辺及び栄地区が盛んであり、名古屋の2大繁華街は、これまで数年も動きが盛んであったが、これから数年間でさらに様変わりしようとしている。

 リニア中央新幹線開通まで、早くて4年。開通が遅れたとしても5年程度で、名古屋~品川間が40分で結ばれることになる。首都圏から中京圏、関西圏までが一体化するスーパー・メガリージョン時代が間もなく訪れるのである。その中心となる名古屋は、まさにリニア新時代への備えを万端に整えようとしている。特に大型のタワーマンションの開設の動きは依然続いているほか、これまでの名古屋でのひとつの弱点であった高級ホテルの開設がようやく始まる。今年は、栄に高級ラグジュアリーホテル「TIAD」が7月に開業を予定し、その後もヒルトンのラグジュアリーブランド「コンラッド名古屋」などの計画が発表されている。

 地方都市でも、都市のリノベーションの動きは盛んだ。岐阜県岐阜市には、まちなかのど真ん中に高層マンション&商業施設の「柳ケ瀬グラッスル35」が竣工する。岐阜市にはさらにJR岐阜駅前に2本の高層ビル構想も発表されており、ますます地域のリノベーションが進む。その他の地方都市でも、岐阜県多治見市の複合商業施設「プラティ多治見」がグランドオープンを控え、愛知県岡崎市の名鉄東岡崎駅の再開発(南口が先行)も進む。その他、愛知県江南市では、名鉄布袋駅に隣接する地区で図書館を中心とする公共施設が開設され、岐阜県中津川市でも図書館を中心とする市民施設が誕生する。図書館機能を設けた複合施設開発の動きはここ数年東海エリアでも続いており、これらの施設にも注目される。

 その他、商業施設で注目を集めるのが愛知県豊川市に開業する「イオンモール豊川」である。イオンモールはこの直近でも岐阜県土岐市や愛知県長久手市に出店しているが、愛知県東部の東三河地方には初出店となり、東三河エリアの商業マップを大きく塗り替えるであろう。また、静岡県静岡市では、既存の人気商業施設「エスパルスドリームプラザ」に新規施設が増設され、清水港界隈の活性化の役割を担う。

岐阜市の中心部に位置する
「柳ケ瀬グラッスル35」(岐阜県岐阜市)

【道路、鉄道の動き】

 東海エリアの高速道路ネットワークは、ほぼ拡充されており、2023年度中に全線開通が予定される「新名神高速道路」と2026年度中に全線開通が予定される「東海環状自動車道」の整備により、強固な高速道路ネットワークが構築される。さらに、各地ではスマートICの開設の動きがあり、今以上の交通利便性向上が見込まれる。

 そうした道路整備を見据えて、名古屋周辺で大型の物流拠点の開設の動きもある。三重県桑名市には、カインズ向け専用物流施設「アイミッションズパーク桑名」、名古屋市内には「ロジポート名古屋」など、道路環境整備を活かした開設が進む。

 鉄道では、名古屋鉄道が知立駅を一部高架化するとともに、2023年度末に、河和線に新駅「加木屋中ノ池」駅を新設する。

【国際級イベント・会合の開催】

 イベントでは、昨年12年ぶりに日本で開催され話題を呼んだFIA世界ラリー選手権「ラリージャパン」が、今年も豊田市などで11月に開催されることが決まった。自治体が主催者となる同レースは国内初であり、地域活性化にも期待される。

 三重県志摩市では、広島市でのG7先進国首脳会議に合わせ「G7三重・伊勢志摩交通大臣会合」が開催される。志摩市では2016年にG7を開催した実績もあり、本会合の開催によって、さらに国際MICEの開催地としての知名度も高まるであろう。また、9月には愛知県で「日台観光サミット」の開催が決定し、インバウンド復活の機運に拍車をかけることに期待される。

たなか みつふみ

田中 三文

旅人総研 代表/

愛知大学 地域政策学部

非常勤講師