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INTERVIEW

2021.04.13

東日本大震災から10年 皆様と“共に”

ーー 震災発生後、城南信用金庫が積極的に取り組んでいる被災地支援についてお聞かせください。

川本 震災後一週間で私たちがまず始めたのは、東北行きのバスを手配することでした。当金庫の職員のご家族には東北ご在住の方が多く、心配する職員を帰省させたいと思ったからです。その後、石巻のお寺を拠点に炊き出しをし、車を借りて移動図書館を作り避難所を回らせていただくこともありました。また、被災地の信用金庫に内定していた学生を当金庫の職員として迎えるご縁もありました。
 2011年6月には、全国の信用金庫で東北復興応援ができないかと社会貢献フェアのプロジェクトを立ち上げ、12年11月、被災地復興支援、地方創生をテーマに掲げた第1回「よい仕事おこしフェア」を開催しました。信用金庫、企業、行政機関、教育機関などが一堂に会した会場で、つながりや絆を結ぶ機会をご提供し、よい仕事おこしの実現を目指すイベントです。年1回の開催で、第1回は東京ドーム、第2回から8回までは東京国際フォーラムを会場に、2日間の会期で最大約5万人のお客様にご来場いただきました。昨年の第9回は新型コロナウイルスの影響で羽田イノベーションシティに会場を移し、リアルとウェブを融合した形を取りましたが、過去最多の全国249信用金庫の協賛が得られ、全国520を超える企業・団体にご参加いただき、その中には東北の皆様も多くご参加されました。

「2013年8月第2回よい仕事おこしフェア」開催の様子
2012年第1回を東京ドームで開催、2013年~2019年東京国際フォーラムで毎年開催した。

ーー 「よい仕事おこしフェア」はどのような成果を生みましたか。

川本 フェアの回数を重ね、よい仕事おこしは実現していきますが、年に2日間の開催では出会いも限られます。お客様から「地域の枠を越えて課題解決をしてもらいたい」というお声も多く、2019年6月、販路拡大や経営課題の解決についてマッチングや相談ができる専用ウェブサイト「よい仕事おこしネットワーク」を立ち上げました。このネットワークによって信用金庫が全国のお客様をつなぐ「毎日が商談会」が実現可能になり、すでに全国約8,400社にご登録いただいております。
 元々は信用金庫と中小企業等で進めてきたネットワークでしたが、活動を続ける中で、全国の市町村、大学、新聞社、テレビ局からもお声がけいただき、連携協定を結んでいただけるようになりました。信用金庫は地域密着の金融機関といわれますが、自治体、新聞社、大学も地域に根ざした専門機関で、それぞれに役割を担います。地域や専門領域の枠を越えてネットワークを結び課題解決に当たることができれば、これほど心強いことはありません。

ーー 被災地支援へつながったネットワークの成約事例をお聞かせください。

川本 一例ですが、震災、原発事故などで被災した福島県双葉町が、復興を目指し企業誘致をネットワークで募集したところ、岐阜県の繊維会社が手を挙げてくださいました。昨年、双葉町と共同開発した新商品タオルを発表し、現在は町内で工場建設を進めています。他にも、都内の企業で自社工場が古く不便になったので、地方も含めて工場建設を検討したいというお客様に、ネットワークを通じて福島の企業誘致情報をご提供させていただいたこともありました。企業の社長様には「信用金庫に地元以外の相談ができるとは思わなかった」とお喜びいただけました。

ーー 他にネットワークから生まれたものは。

川本 ネットワークの皆様にご協力いただき、4年前から震災復興を願う「興こし酒プロジェクト」を始めました。1年目は、東日本大震災と熊本地震で被災した4県の米をブレンドした日本酒「絆結」(きゆ)を、2年目からは47都道府県のすべての米がブレンドされたオールジャパンの日本酒「絆舞」(きずなまい)を造ることができました。その後も発展し、福島の酒粕を使って長崎の製菓会社がカステラを作り、熊本地震に遭った熊本県で被災8道県の米を使った焼酎を、一昨年秋の台風で被災した千葉県産ピーナッツを原料に焼酎が生まれるなど広がりを見せていきました。商品の売り上げの一部は、全国の被災地へ寄付させていただいております。

『輿こし酒プロジェクト』
2017年岩手・宮城・福島・熊本の被災4県の復興のシンボルとして「絆結」が生まれた。その後、2018年には47都道府県産のお米をブレンドした「絆舞」、2019年「絆舞 令和」、2020年は「コロナに負けない」日本中の熱い想いが集まり、過去最高の164地域のお米をブレンドした「2020(フレフレ)絆舞」が誕生。

ーー 新型コロナウイルスの影響で地域経済は大打撃を受けています。これまで、どのように立ち向かってきましたか。

川本 コロナ禍前より融資案件は激増しておりますが、私たちは金融機関ですので、お客様の融資や資金繰りに尽力するのは当然です。しかし、それは怪我に絆創膏を貼るようなもので根本治療にはなりません。信用金庫がやるべきことは、本業支援なのです。そのためにまずはお客様の声を聞く必要があると、地域のあらゆる業種の皆様のお困りごとをお聞きしました。その中で特に苦しい状況にある飲食業の皆様をご支援させていただこうと、テイクアウト支援サイトを立ち上げました。現在では、1,300店以上にご登録いただいております。さらに、よい仕事おこしネットワークによる全国の逸品のお取り寄せ情報を発信するサイトも立ち上げ、すでに400社以上にご登録いただきました。また、去年7月には、羽田イノベーションシティに「よい仕事おこしプラザ」を開設し、新型コロナウイルス対策本部として、商談会やコロナ対策の相談など本業支援を実施しております。

ーー 支援の根底にある信用金庫の経営理念とは。

川本 当金庫には、先人から受け継がれてきたDNAがございます。一人は119年前に当金庫の礎をつくった加納久宜(かのうひさよし)で、この方の教えは「一にも公益事業、二にも公益事業、ただ公益事業に尽くせ」です。もう一人は、第3代理事長・元会長の小原鐵五郎(おばらてつごろう)です。「貸すも親切、貸さぬも親切」という言葉を残しており、「お客様のお役に立つ資金であれば融資しなさい。しかし投機などお客様にリスクのある融資はしてはならない」と指導しています。これら先人の教えが根底にございますから、被災地やコロナ禍でお困りの皆様を見て何も行動しないわけにはいきません。

東京新聞 2021年3月11日 朝刊 15段

ーー 今の想いと、今後の展望をお聞かせください。

川本 この10年の活動で、一人ではできないことも仲間と協力し合えば、解決できることを知りました。助け合う、支え合う尊さを知りました。東日本大震災は100年に一度の災害と言われましたが、今世界は、新型コロナウイルスという新たな災いに襲われています。これまでに絆を結んだ全国の素晴らしい仲間たちとともに、この難局を乗り切りたいと思います。復興は、まだ道半ばです。これからも頑張ってまいります。皆様と“共に”。

ーー 東京新聞も全社を挙げて活動を応援させて頂きます。本日はありがとうございました。