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INTERVIEW

2024.09.02

松本幸四郎さん主演「鬼平犯科帳」とともに、時代劇の魅力を現代に届ける

2024年5月10日に松本幸四郎さん主演の劇場版「鬼平犯科帳 血闘」が全国公開されました。おめでとうございます。企画からテレビスペシャルと劇場版、そして連続シリーズの制作、放送・公開に至った経緯を教えていただけますでしょうか。

茂木 企画の始まりは約6年前で、新たな「鬼平犯科帳」シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーを務めた宮川(朋之)を中心に、中村吉右衛門さん主演「鬼平犯科帳」の4Kデジタルリマスター版を時代劇専門チャンネルで独占放送することが検討された際、当時社長であった杉田(成道/現取締役相談役)が宮川に放った一言がきっかけだったと聞いています。杉田が「4K化で作品のライブラリーを充実させるのもいいけれど、新しい“鬼平”を考えてもいいんじゃないか」と言ったところ、宮川はほとんど反射的に「鬼平役は松本幸四郎さん以外は考えられない」と答えたそうです。

新たなる鬼平のきっかけとなった
中村吉右衛門さん主演「鬼平犯科帳」の4Kデジタルリマスター版

 そこから池波正太郎先生の原作権を管理するオフィス池波さまに、新たな映像化をご提案し、映像化権の許諾をいただきました。正式に時代劇専門チャンネル主導のもと、松本幸四郎さん主演「鬼平犯科帳」のプロジェクトが動き出しました。宮川と杉田は、28年間にわたって「鬼平犯科帳」を演じた中村吉右衛門さんのもとを訪れ、直接「わたしたちが新しい“鬼平”を作らせていただきます」と伝え、これに対し、吉右衛門さんご本人から「わたしは精一杯やりました。わたしのときには池波先生にご指名いただき、その想いで28年間頑張ってきました。これから後はどなたが演じるのか存じませんが、新たな“鬼平”ということで、進めていただいていいんじゃないでしょうか」という、前向きなお言葉を頂戴したと聞いています。そして主演の松本幸四郎さんへの出演交渉の際は、ご本人から「本当に嬉しいです」とご快諾いただき、長男である市川染五郎さんとの親子共演も実現する運びとなりました。
 原作および前作からの根強いファンが多くいらっしゃる「鬼平犯科帳」を新たに撮影するという壮大なプロジェクトですから、構想初期から、テレビスペシャル1作品、劇場版1作品、そして連続シリーズ2作品というパッケージ化で進めておりました。多くのお客さまに満足していただける作品を作るため、制作陣の意識も高まり、魅力的なキャストの皆さんも続々と出演が決まり、撮影は和気藹々とした雰囲気で順調に進められました。また今回の撮影では、CG(コンピュータ・グラフィックス)などの技術を活用し、大河ドラマや時代劇映画などでも多用される映像制作技術である「VFX」を用いることにより、江戸の街並みや夜の闇に浮かび上がる陰影など、“鬼平”の世界観を美しく情緒的に再現することができました。 ひと作品ずつ見ても楽しめるのはもちろんのこと、テレビスペシャル、劇場版、連続シリーズ2作の4作品を通してご覧いただくことで、より深くキャラクターの心情やストーリーの魅力を堪能していただけると思います。時代劇専門チャンネルに加えて、U-NEXTやhulu、Amazon Prime Video時代劇専門チャンネルNET(※現状は、テレビスペシャルと連続シリーズのみ)といった新たな配信プラットフォームでも観られますので、多くの視聴者さまに楽しんでいただきたいですね。
※時代劇専門チャンネル:日本映画放送株式会社が運営する24時間365日、時代劇を放送するテレビジョン放送

劇場版「鬼平犯科帳 血闘」公開記念舞台挨拶

劇場版『鬼平犯科帳 血闘』では、2024年4月30日に名古屋で行われた中日新聞主催特別試写会に約5,000人の応募がありましたね。東海地方のマーケットは、どのように捉えられていますでしょうか。

茂木 定員150名の試写会に5,000人もの応募があったと聞いて驚いたと同時に、中部エリアの皆さんが「鬼平犯科帳」に寄せてくださっている注目と期待感を感じました。やはり戦国武将の織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑が生まれ育った地が愛知県であることや、今年芸能生活50周年を迎える俳優・松平健さんの出身地が愛知県豊橋市であることなどから、愛知県は時代劇と深いゆかりのある場所だと思います。名古屋城もありますし、「名古屋おもてなし武将隊」というプロジェクトもあり、各地でイベントをしているとも耳にしたので、作品と地域性を絡めたプロモーションができたらとても良さそうですよね。

2024年4月6日付中日新聞朝刊掲載
名古屋で行われた特別映画試写会には約5,000名の応募が

2024年7月6日に放送・配信されたドラマ「血頭の丹兵衛」をもって「鬼平犯科帳」SEASON1が終了しました。次回作の制作が決定しているとお聞きしましたが、今後はどのような宣伝や広報を予定していますか。

茂木 「鬼平犯科帳」SEASON1の公開、放送中にSNSなどを通じて「続きが観たい!」「楽しみ」と心待ちにしてくださっている方々の声がたくさん届きました。魅力的なストーリーや登場人物が多い『鬼平犯科帳』ですので、次回作の放送決定と同時にエックス(旧Twitter)上で「どんなエピソードが選ばれるのだろう」「どんなゲスト俳優の方々が出演されるのだろう」と予想合戦で盛り上がっていただいているところからも期待値の高さを感じております。
 「時代劇専門チャンネル」は特に70代〜90代の時代劇ファンの方々に親しまれていますが、アクティブシニアからさらに若い世代へ向けて、配信プラットフォームを通じて新しい「鬼平犯科帳」を届けることができました。時代劇は重厚で普遍的な人間ドラマなので、現代にも通じるものがあり、世代を問わず共感し、好きになってくださる方が多いことも発見でした。今後も、ストーリーはしっかりと池波正太郎先生の小説『鬼平犯科帳』に原作を尊重しながら、配信戦略やSNSを使用した宣伝などでも新たな挑戦を行い、改めて多くの方に松本幸四郎さん主演の「鬼平犯科帳」をご覧いただけるよう努めていきたいと思います。

最後に、新聞広告に期待する役割やご要望などがあればお聞かせください。

茂木 新聞を読んでいる方々と、時代劇が好きな方々は、世代的に重なっていると思います。新聞のもつブランド力はネット媒体とは一線を画すので、今後とも協賛や広告などさまざまな形で価値を共創していけたらと思います。特別試写会の際に、リアルイベントを通してお客さまの生の声や反応を得られたことは、とても嬉しいことでした。今後は、WebやSNSなどのオンライン媒体との融合も含めて、新たな宣伝方法を試していきたいですね。
 時代劇を作り続けることは「伝統的な映像文化の継承」であり、これこそが我々の使命だと考えています。そのため、ぜひ同じ目標に向かって伴走していただけると心強いです。

—本日はありがとうございました。