MARKETING MAGAZINE
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INTERVIEW
2023.10.10
世界文化に技術で貢献する。改革を掲げて見据える未来
──ご出稿いただいた貴学の広告「すべての科学者に告ぐ。」が、第14回中日新聞社広告大賞最優秀賞を受賞されました。おめでとうございます。創立80周年を記念して作られたそうですが、まずはご出稿の経緯や、広告に込められた思いをお聞かせください。
日下部 創立80周年の記念として大学のメッセージを広くお伝えするために、新聞という信頼できる大きなメディアで発信したいという思いがありました。千葉工業大学の建学の精神は、「世界文化に技術で貢献する」です。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、先端技術が戦争のために使われている現状があります。本来、技術は人の幸福のために開発されるべきですし、文化の発展に寄与していくべきです。これから先の100周年に向けて、理工系大学の我々がどのように進むべきか、今後の方向性を示すという意味も含めて、このような広告を制作しました。
──本当にインパクトのあるメッセージですよね。
日下部 制作段階から「メッセージ性を強く打ち出したい」というリクエストは出していました。最終的に4案の中からこちらの意見広告風のデザインに決定しましたが、私個人としては「刺激的すぎて学内で通らないかもしれない」との不安があったので、理事長がこれだと決めてくれたときはクリエイティブディレクターとともに喜びました。さらに賞までいただけるなんて、本当にうれしかったですね。
──ご覧になった方からの反響はいかがでしたか。
日下部 特にSNS上で「すばらしい広告だ」との感想を多くいただきましたし、「ぜひこれからの大学の発展のために使ってください」とのことで、一般の方から寄付をしていただいたこともありました。一方で、黒に赤という、どちらかというと悪いものを連想させるようなデザインに、一部ネガティブなご意見も頂戴しました。印象的なこの字体は、『鉄腕アトム』など科学技術をテーマとした作品を手がけた漫画家・手塚治虫さんの作品を意識したと制作チームは話していました。広告を出稿する際に、一番避けたいのが読み飛ばされてしまうことですので、理事長らとともに「これなら紙面をめくる手を止めてくれるだろう」と決断した背景があります。ある程度ご批判は覚悟をしていましたが、想定よりも少なかったことに安堵しました。
──ご苦労が偲ばれます。千葉工業大学では2021年に「変革センター」をお作りになられました。2024年にできる「情報変革科学部」と「未来変革科学部」の二つの学部にも、“変革”が使われています。この言葉を使用した意図を教えていただけますか。
日下部 米マサチューセッツ工科大学メディアラボの所長を務められた伊藤穰一氏が、今年7月に新学長に就任しましたが、彼が2021年に「変革センター」を設立したことが始まりです。当時は私たちも馴染みのない言葉でしたが、“社会変革”という言葉を新聞などで目にするようになり、インターネットから始まった情報系分野も、今後、仮想現実やWeb3などが主流になると言われはじめました。めまぐるしく社会が変化するなかで、大学自体も変わっていかなければいけない。覚悟の意味での変革という言葉を使っています。
また、日本が直面している問題のひとつに、IT技術者の人材不足があります。情報分野においてトップクラスの教育をするために、伊藤先生にカリキュラムなども監修いただき、学部改編をしました。社会変革を起こせる人材を養成したいとの思いから、ここにも変革という言葉を使っています。過去にない学部学科名称だったため、文部科学省への申請時は学部名が認められるか危惧しましたが、無事、日本初の変革という言葉を冠した学部が誕生しました。
──20年後の創立100周年に向けて、今後の展望を教えていただけますか。
日下部 ご承知のように、大学は構造不況業種です。18歳人口が減っていく中で、今後は各大学が学生を取り合う状態になっていくと予想されます。その中で生き抜いていくためには、学生が望むものに応えられる大学であること、そして社会が求める時代に即した人材を輩出することが重要です。もちろん研究者を養成することも大切ですが、本学が目指すのは、今まで力をいれてきた研究分野に加え、不足しているIT技術者やデジタル人材の即戦力の育成。この分野を目指す学生を増やすべく、これからも前向きに変化し、理工系分野を盛り上げていきたいと考えています。
──最後に、新聞や新聞広告に対するご意見や期待などありましたらお聞かせください。
日下部 SNSやWEB といったデジタルへの移行はこれからも進むと思います。しかし、新聞というメディアの影響力や発信力は変わらず強いと感じています。紙面を含め、メディアミックスなど新たな形での発信をしていただけたらと思っています。
──ありがとうございます。我々も貴学のように、変革の気持ちを持ち続けていきたいと思います。