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2022.12.21
注目が集まる東海エリアのeスポーツ市場
アジア競技大会2026年愛知・名古屋に向けて動きが活発化
【盛り上がるeスポーツ】
東京五輪に先駆けてIOCが開催した「Olympic Virtual Series」では野球やモータースポーツなど5種目のサイバー・スポーツ競技が行われ、世界から選手が参加した。日本では茨城国体の文化プログラムとして「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」が開催されて以降毎年開催されており、2022 TOCHIGI大会は東京都が総合優勝となった。このeスポーツは世界中で大会が開催されており、2021年にスウェーデンで開催されたDota 2の公式世界大会「The International 10」は賞金総額40,018,195ドル(約59億円)と高額な賞金が支払われている。これらの大会で賞金を稼ぐプロゲーマーが活躍しており、年収1億円を超えるプレイヤーが多数誕生している。国内では2021年にNTTドコモがeスポーツリーグ「X-MOMENT」を設立し、「PUBG MOBILE」と「レインボーシックス シージ」の2つのリーグを運営するなど、eスポーツは活況を呈している。
【成長するeスポーツ市場】
市場調査会社Newzooによると、2022年のeスポーツ産業の世界の売上高は前年比22%アップの13億8000万ドル(約2042億円)に成長すると予測されている。日本eスポーツ白書2022によると、日本eスポーツ市場は「スポンサー」収入が6割強と最大となっている。成長するeスポーツ市場には、ソフトバンク、コカ・コーラ、NTTドコモ、DMM.com、日清食品、Cygames、吉本興業、Intelなど数多くの企業が参入しており、Z世代をはじめとする若い世代を対象としたビジネス展開を進めている。
【東海エリアの産業動向】
eモータースポーツでは、TOYOTA GAZOO Racingがプレイステーション4の「グランツーリスモSPORT」で「GR Supra GT Cup」を開催しており、2019年の大会では約3万人が参加した。プロeスポーツチームでは名古屋OJAが設立され、おやつカンパニーとカードゲーム部門「名古屋OJAベビースター」を立ち上げた。eスポーツ施設では、中部テレコミュニケーションがコミュファ eSports Stadium NAGOYAを名古屋パルコに開設した他、NTセブンスが栄にNTP Esports PLAZAを立ち上げ、選手育成の拠点づくりを進めている。アジア競技大会2026年愛知・名古屋では正式種目として採用されることが有望視されており、愛知eスポーツ連合は「産業をつくる」「夢をつくる」「社会に応える」という3つの理念に沿って注力している。東海エリアでのeスポーツの産業生態系の形成が進んでおり、2026年に向けて企業の市場参入が加速することが見込まれる。
長尾 尚訓
ながお ひさのり
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
政策研究事業本部
研究開発第1部(名古屋)
主任研究員