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INTERVIEW

理学療法士の知見を生かして社会に貢献

2022.12.21

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ーー エスカレーターマナーに関する貴団体の広告が、第13回中日新聞社広告大賞一般紙の部で審査員特別賞を受賞されました。社会的な意義の大きい活動だと存じますが、まずはエスカレーターのマナー向上に取り組まれた経緯についてお聞かせください。

森島 東京都理学療法士協会では、毎年学術大会を開催しています。2015年の大会は、ちょうど2020年のオリンピック・パラリンピック大会の東京開催が決まった時期だったため、都民の健康増進をテーマとしたシンポジウムを開催し、パラスキーヤーとして活躍された大日方邦子さんをお招きしました。理学療法士は、ご存じのように身体運動機能の回復や維持・向上を図るという役割を担っているので、大日方さんにもそうした期待について発言していただきたいと思っていたのですが、「東京でエスカレーターの右側を歩く習慣をやめませんか」という意外な提言をいただきました。これが最初のきっかけです。

ーー その提言を聞いたときにどう感じられましたか。

森島 ハッとしました。私自身、エスカレーターは立ち止まる人が左、歩く人が右というのが常識だと思っていましたが、左半身に障がいを持たれている方の場合、右の手すりにつかまる必要があるんですね。障がい者や高齢者をサポートするはずの我々理学療法士がこの視点に気づけずにいたのは衝撃だったというのが正直な気持ちです。すぐに対応するため、エスカレーターマナーアップ推進委員会を立ち上げました。以降、駅や自治体などと連携しながら、啓発のためのさまざまなイベントやキャンペーンを定期的に実施しています。

キャンペーン活動のPRグッズとイベントの様子。
都内の各地でエスカレーターマナーアップを啓発するイベントを開催した。

ーー 委員会での活動に対してはどのような反響がありましたか。

森島 委員会の主催イベントで、いまでも印象に残っている出来事があります。小児まひで左手が不自由な娘さんを連れた女性がいらして、感謝の言葉をいただきました。その娘さんは、これまで右側に立つことができないため、やむを得ず後ろ向きにエスカレーターに乗り、左側の手すりに右手でつかまっていたそうです。こうした実情がなかなか周知されず、不自由な思いをされていたときに、理学療法士が啓発活動をしているということを知り、勇気づけられたとおっしゃっていました。逆に私たちのほうこそ勇気づけられました。

ーー 広告をご出稿いただいたのは2021年8月23日。東京パラリンピックの開幕前日でした。この日に掲載することになった経緯を教えてください。

森島 当初、エスカレーターマナーアップ推進委員会の活動は、東京オリンピック・パラリンピックで終了する予定で、この間、先ほどの親子の例のように感謝もいただきましたし、埼玉県ではエスカレーター条例ができるなどの影響はありました。しかし、まだまだ従来の慣習を変えるには至っていないため、以降も継続することになったという経緯があります。広告出稿のタイミングは、東京パラリンピック開幕前日に合わせて、それまでの活動をいったん総括し、改めてより一層取り組んでいこうという意思の表明でもあります。

東京新聞 2021年8月23日朝刊
これまでの活動の総決算でもあり、今後のエスカレーターマナー改善に向けた活動への意思を示した広告。
理学療法士をはじめ、多くの人からの賛同の声があった。

ーー 健康増進という点では、東京新聞でもフレイルや認知症のリスクを減らすための交流活動の場として、会員組織「東京新聞ヘルスケアメイツ」を立ち上げました。貴団体には、イベントでの運動プログラム作成でご協力いただいていますが、こうした取り組みについてはどのようにお考えでしょうか。

森島 高齢化が進んで健康寿命を延ばすことの重要性が言われるなか、新聞社が率先して発信していただけることに大きな期待を持っています。これまでも地域では同様の取り組みがありましたが、新聞の規模になると発信力が違います。私たち理学療法士の知見が役立つのなら嬉しく思います。

ーー ありがとうございます。貴団体は2013年に公益社団法人を取得されていますが、都民の公益という観点で、エスカレーターマナーアップ推進委員会以外に力を入れている活動があったら教えてください。

森島 災害対策委員会を運営しています。契機になったのは公益社団法人になる前の東日本大震災ですが、近年は自然災害の被害が甚大化していますし、南海トラフ巨大地震の可能性も指摘されています。ひとたび災害が起きたときに、理学療法士がどのような形で社会貢献できるのか、地域や他団体と連携しながら体制づくりや人材育成に取り組んでいます。

ーー 理学療法士だからこそできる支援がありそうですね。そちらの活動も期待しております。では最後に、新聞広告に対する期待や要望がありましたらお聞かせください。

森島 私たちの活動を多くの方に知っていただくために、さまざまな広報活動を行なっていますが、そのなかで新聞という媒体は、情報の信頼度が高いことと、活字と親しむ世代の方に届きやすいことが特徴だと思います。そういう点では啓発的な広告には向いていると感じますし、御社の広告賞は一次審査が一般読者とのことで、そういう方に評価をいただいたというのは嬉しい限りです。今後も、ヘルスケアメイツともども連携させていただければと思います。

ーー こちらこそよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

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